どんなニュース?簡単に言うと
「なんかいつもと違う」平成29年9月から変更される厚生年金の保険料額表を見て違和感を覚えました。昨年度と何が違うのか。今回は厚生年金の保険料率についてまとめていきます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
毎年9月は厚生年金の保険料がアップする時期。
2017年8月終わり。
今年も日本年金機構のウェブサイトで厚生年金の保険料額の表が掲載されました。
中身を見てみると、ちょっと違和感が・・。
いつもと違う・・。
それがこちら。
なんか間延びしているなぁーという感じ。
こうギュッと詰まった感が無いんです。
そこで、前年度のと比較をしてみると・・・。
そうそう!これこれ!
このギュッと詰まった感じなら違和感は無いんです!
今回は今年の厚生年金の保険料に何が起きたのかを解説してみます。
厚生年金の保険料は給料や時期、立場によって異なる
給料によって異なる保険料
まず、厚生年金の保険料は同じ会社でも給料によって異なります。
給料が安い人は安い保険料、高い人は高い保険料になります。
もちろん、
将来の年金は安い保険料の人より高い保険料を納めた人の方が高くなります。
給料安い人 = 安い保険料 = 安い年金
給料高い人 = 高い保険料 = 高い年金
時期によって異なる保険料
そして、
過去の保険料より、今の保険料の方が高いです。
なぜなら、厚生年金の保険料は、
給料 ✕ 保険料率 = 保険料額
で計算されますが、掛け算する保険料率が高齢化を反映して年々上昇しているからです。
ちなみに、過去5年の保険料率をまとめてみると
- 平成29年9月〜 18.300%
- 平成28年9月〜 18.182%
- 平成27年9月〜 17.828%
- 平成26年9月〜 17.474%
- 平成25年9月〜 17.120%
だから、加入していた時期によって保険料は違うわけです。
立場によって異なる保険料
同じ厚生年金の加入メンバーであっても、立場によって保険料は異なります。
この立場っていうのが結構複雑。
大きく分けると、
- 民間企業の立場
- 公務員の立場
と分かれます。
1の中でも更にこんな感じに分かれます。
- 船員としての立場
- 私立学校共済に入る立場
- 厚生年金基金にも入る立場
- 上記以外の立場
それぞれの立場に応じた保険料率によって保険料額が異なるわけです。
立場による保険料の違いは年金の歴史に関係あり
なんでこんなに立場によって保険料率が違うんだ。複雑になるだけだろッ!
と年金を勉強する身にしてみれば、怒りたくもなりますが仕方ありません。
立場が違えば制度の中身も異なる。
理由は制度の中身が違う立場の人たちが厚生年金に合体したからです。
まず、民間企業と公務員の違い。
公務員は共済組合という枠組みで、民間企業は民間企業の枠組みで戦前・戦時中にスタートしました。
つぎに、民間企業の中でも
- 船員 もともと別の保険だったが昭和61年4月に合体
- 私立学校共済 もともと厚生年金のメンバーだったが昭和29年に出ていった
という歴史を経て、公務員とbは平成27年10月に厚生年金に合体。
結局、公的年金制度は
- 勤める人のための厚生年金
- 厚生年金に入らない人のための国民年金
の2つに集約されたわけです。
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平成29年の表が変わったのは「船員」にあり
厚生年金に合体したのであれば、同じ保険料になるはず。
確かにそうなのですが、そもそも中身が違う制度が合体したのですぐに同じにはできません。
長い年月をかけて、徐々に一緒にするソフトランディングの形をとります。
一気に変えれば影響が大きいからです。
今年、平成29年の保険料額表がスッキリしたのはここにあります。
ソフトランディングの結果、船員と一般(d)の保険料が一緒になったからです。
ちなみに、
表を見ると、船員と「坑内員」も一般の人とは別扱いになっています。
船員と同様、働く環境が異なるので別扱いにしていました。
みんなが一緒になるのはいつか?
まず、みんなが一緒になる日は来ません。
なぜなら、厚生年金基金に入る人たち(c)はその基金によって保険料率が異なるからです。
ですので、基金に入る人たちはまた別の保険料額表になっています。
そして、保険料率も違います。
たとえば、
この表を見ると、
免除保険料率が2.4%、厚生年金の保険料率が15.900%となっています。
2.4%分は国に納めなくてもよいので「免除」となります。
その分は基金が預かって運用します。
免除保険料率が基金によって違うので、保険料額表もPDFのページ数が多い多い。
気になる方は見てみてください。
※参考 厚生年金基金に加入する一般・坑内員の被保険者の方
メモ
2020年9月でリンクが切れています
共済年金に入る人の保険料はいつ一緒になるか?
公務員と私立学校共済は厚生年金に統合されたので保険料が一緒になるはず。
厚生年金基金とは異なり、こちらの人たちは18.3%に統一されます。
ただ、平成29年9月時点では天下統一はもう少し先。
早速、平成30年9月になれば、公務員は18.3%の民間企業と一緒になります。
統一予定表を参考までに載せておきます。
今回のニュースまとめ
今回のニュースをまとめると以下のとおり。
- 厚生年金の保険料は給料や時期、立場によって異なる
- 立場による保険料の違いは年金の歴史に関係あり
- 平成29年の表が変わったのは「船員」にあり
- 厚生年金基金に入っていると免除保険料率で違いあり
- 共済加入者と民間企業の保険料統一はまだ先
今回は違和感を覚えた厚生年金の保険料額表から保険料率についてまとめてみました。
そういえば、この平成29年9月に関して大事なことを忘れていました。
9月に変わる18.3%。
この18.3%は今後上がりません。
毎年度上昇を続けてきた保険料率がついに上昇ストップを迎えるわけです。
保険料が上がらなくて年金財政は大丈夫なのか?
大丈夫なように、一方で2つのことを考えています。
- 年金保険に入る人を増やす
- もらう年金額が増えるのを抑える
1はご存知のとおり、平成28年からパートタイマーへの社会保険加入を拡大しました。
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2はこれから。
制度の改正は終わっているのであとは実行に移すだけです。
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ただ・・・。
厚生年金の保険料は上がらないものの、保険料と「一緒に」徴収しようというものがあります。
それが、今話題の”こども保険”
今でさえ、「子ども・子育て拠出金」なるものが、事業主の全額負担で一緒に徴収されています。(保険料額表の下の方に出ています)
給料から天引きされる保険料のシステムを使って、なんでもかんでも天引きされたらたまったものではありません。
現役世代の負担を抑えるために保険料上昇に歯止めをかける改正を行ったのに、骨抜きにされている感じがします。
制度ができるかどうかは不透明ですが、今後注意深くウオッチしたいと思っています。
シモムー
みんなのねんきん主任講師