どんなニュース?簡単に言うと
振替加算の支給漏れ事件が報道されたのは2017年9月のこと。あれから2カ月。今月11月には未払い分が支払われました。今回は支給漏れの原因について厚生労働省発表の資料からより詳しい原因をシモムーが分析する第3回です。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
みんなのねんきん主任講師のシモムーです。
振替加算の支給漏れ事件について分析した記事の第3回。
第1回は、その原因について、
- 日本年金機構と共済組合との情報連携が不十分だった
- システム処理に原因があった
という行政側に原因がある事例をみていきました。
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振替加算の支給漏れ原因をシモムーが詳しく分析してみた 第1回/全4回|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 振替加算の支給漏れ事件が報道されたのは2017年9月のこと。あれから2カ月。今月11月には未払い分が支払われます。今回は支給漏れの原因について厚生労働省発表の資料からより ...
続く第2回は、別の原因として、年金受給者自身の届けが無かった事例を取り上げました。
- 妻が年上で夫が後から加給年金額の加算を受けた場合
- 妻が年上で夫に加給年金額の加算が無かった場合
という状況で、妻には振替加算開始の届出が必要なところ、届出がないために加算ができなかった事例です。
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振替加算の支給漏れ原因をシモムーが詳しく分析してみた 第2回/全4回|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 振替加算の支給漏れ事件が報道されたのは2017年9月のこと。あれから2カ月。今月11月には未払い分が支払われます。今回は支給漏れの原因について厚生労働省発表の資料からより ...
今回はこれらの原因を踏まえて、未払い分を支払いする場合の時効の問題について解説していきます。
今回も最初に前提条件から
今回も、厚生労働省の発表資料にある「振替加算の総点検とその対応について」を基にして加算漏れが発生した経緯の続きを説明します。
また、今回も前回と同様、取り上げる事例の全てにおいて、
- 夫:厚生年金、共済組合期間のいずれかが原則として20年以上ある
- 妻:夫に生計維持されている、障害年金の権利はない、妻の厚生年金・共済組合期間が20年未満である
- 平成27年10月の厚生年金と共済年金の一元化前の事象である
という前提となります。夫と妻が逆の場合も同じです。
未払い分は2017年11月に支給する
今回の振替加算の未払い分は対象者にお知らせをしたうえで、2017年11月15日に支払いをしました。
年金は偶数月に2カ月分を後払いする支払い方式。
ですが、定期の支払月以外でも奇数月に支給することがあります。
例えば今回のような未払い分や、差額調整分、年金の初回の支払い等のイレギュラーなものが該当します。
未払い分は5年で消滅時効にかかる
振替加算の未払い分を支給するにあたり、問題になるのが時効の問題です。
つまり、大昔の未払い分も全て含めて支払ってもらえるのかという問題です。
普通に考えれば、時効だなんだ言わずに全て支給せよ!となりそうですが、どういう処理をするのでしょうか。
ここで、
年金の支払いを受ける権利を「支分権」といいます。
ゼロから年金の権利が生じさせる権利は「基本権」というのですが、生じた権利をもとにして、「支払いを受ける権利」はその枝別れしたものという感じでしょうか。
この支分権は5年で時効により消滅します。
つまり、5年より前の年金は支払ってもらえないということです。
老齢年金でよくある支分権の消滅時効の例を一つ。
66歳になって、掛けた厚生年金の請求をした。
実際は、60歳から「特別支給の老齢厚生年金」の受給権(基本権)があった。
60歳からもらえるとは知らず、65歳からの請求だと勘違いしていた。
この場合、年金請求書を受け付けた日を基準とし、請求時点で6年前に遡って基本権を決定しますが、支分権(支払いを受ける権利)は5年分だけ。
つまり、1年分は受け取ることができません。
年金の時効を具体的に考える
もう少し、年金の特殊事情を踏まえて、時効の問題を具体的に考えてみましょう。
まず、5年の時効はいつから進行するのか。
年金は権利が生じたら、翌月分から受け取ることができます。
ただ、
年金の支払は最初にも説明したとおり、各偶数月に後払いとなるため、時効の始まり(起算日)は、初回の支払月の翌月の1日になります。
図解してみましょう。
平成24年4月24日に年金の受給権が発生。
翌月の5月分から受け取れます。
その初回の支払月は6月とみなします。
実際の初回支払いが何らかの事情で7月や8月であったとしても、受給権発生月の翌月分を支払うべき偶数月を基準とします。
すると時効起算日は7月1日となり、この日から5年以内となる平成29年6月30日までに年金請求すれば、過去分の総額が時効で消滅せずに受給できます。
仮に年金請求の手続きが6月30日を過ぎ、7月から8月末までの間にあった場合は、残念ながら、平成24年5月分の年金は受け取ることができません。
同様に、請求手続きが9月から10月末までの間にあった場合は、平成24年7月分までの3カ月分が時効により受給できなくなります。
この取り扱いは年金請求だけでなく、今回の振替加算など加算額の請求についても同じ考え方です。
今回の振替加算の支給漏れの時効はどう考える?
今回の振替加算の加算漏れ事例は、これまで2回にわたり説明したとおり、
- 行政側に原因がある
- 年金受給者自身の届けがなかったので受給者側に原因がある
と、2種類にわかれます。
前者の場合、その当時から正当に受け取るべき振替加算が加算されていなかったもので、いわゆる事務処理誤りによる事案(行政側に原因がある事案)です。
責められるべきは行政側ということ。
そこで、日本年金機構は年金を受ける(この場合は振替加算のみ)権利の消滅時効を援用しないとのこと。
「援用(えんよう)」というのは、「時効の効果を受けたい!」と意思表示することです。
年金で言えば、「5年より前の振替加算は時効なんだから支払いたくない」と宣言することです。
時効は、援用しなければその効果が生じません(民法に規定があります)。
つまり、時効になるかどうかは、当事者の意思次第ということなんです。
日本年金機構の資料にもハッキリと「時効の援用は行わない」(「振替加算の総点検とその対応について」11ページ)と記載があります。
このため、加算のタイミングが5年以上前に遡っても、加算開始の翌月分からの未払い分は全額支給されます。
逆に、後者(受給者の届けがなかった)の場合は残念ながら、消滅時効が援用されます。
届け出を受け付けた日を基準として、5年以上前の部分は支給されないことになります。
振替加算漏れの受給者が既に死亡している場合
振替加算が加算されるべき年金の受給者が既に亡くなっていたらどう考えればよいでしょう。
その場合、死亡前に受け取れたであろう振替加算相当額が、遺族に支払われます。
年金受給者が亡くなった際に遺族は死亡届と一緒に最後に支払われなかった故人の年金を受け取る手続きをします。
その手続きをした方に未払い分が支払われます。
最後の手続きから1年以上経過している場合は、請求者の確認と振込先の口座確認のため、遺族に通知が発送されます。
ただし、振替加算加算の届け出がなかったために支給されていなかった場合(上記の「後者」)は、5年以上前に亡くなっていた場合は、未払い分の支払いはありません。
最終回に続きます。
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振替加算の支給漏れ原因をシモムーが詳しく分析してみた 第4回/全4回|みんなのねんきん
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