どんなニュース?簡単に言うと
厚生労働省より平成28年度の国民年金保険料の納付率が公表されました。今年度も改善が進み前年度比+1.7%の65%へ。国の保険料対策についてシモムーの視点でまとめてみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
厚生労働省が国民年金保険料の納付率を公表しました。
実は納付率の公表は随時されていまして、私のブログでも以前2つの記事を執筆したことがあります。
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発表!平成27年度年金保険料の納付率 第1位はあの神社の県|みんなのねんきん
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2015年12月 国民年金保険料納付率ランキング 第2位は新潟、第1位は・・|みんなのねんきん
出典記事が発表された日:2016年02月26日 どんなニュース?簡単に言うと 厚生労働省より国民年金の保険料がどれだけ納付されているか県別のデータが公表されました。47都道府県のうち、きちんと納めてい ...
今回は平成28年度全体を通じた納付率の最終結果です。
納付率とは何なのか?
という解説は他の記事でもしてはいるのですが、重複を恐れず、現時点の私の知識で解説してみます。
(時間をおくと、また違った感じで解説できるかもしれないので)
また、
納付率を改善させるために国は一体何をしているのか。
保険料の収納対策という点にもフォーカスしてみます。
まずは「納付率」とは何なのかって話
なぜか誤解が多いが第1号被保険者だけの話
まず、この保険料の統計データは国民年金だけの納付率になります。
厚生年金に入っているサラリーマンやそのサラリーマンに扶養されている第3号被保険者は対象外です。
これらの方々以外の第1号被保険者だけのデータです。
納付率というと年金制度全体の納付率と誤解される人もいますが、全体じゃありません。
平成28年度末現在で、
- 第1号被保険者:1,575万人
- サラリーマン(厚生年金):4,264万人
- 第3号被保険者:889万人
という人数構成。
第1号被保険者だけなんですから、あくまで公的年金制度加入者の一部の話であることを念頭におきます。
ですので、納付率が悪化したからといって、年金制度全体が破綻するって話にはなりません。
納めるべき月数に対する納まった月数の割合が納付率
何か、納付率という言葉のイメージからすると、
保険料を納めなきゃいけない人の数に対する納めた人の数の割合
って感じがするんですが、人数ではありません。
1年度12カ月の中でも納めたり納めなかったりすることができるので、月単位で把握するんです。
つまり、
ある年度において本来納めるべき全体の月数に対して何カ月分が実際に納まったか、その割合を示したもの
納付率 =
納められた月数
本来納めるべき月数
「本来納めるべき」ということは逆にいうと、
本来納める必要がない月=例えば全額免除を受けた・学生なので全額の猶予を受けたという月は分母から除きます。
つまり納付率を向上させるためには2つのアプローチがあります。
- 分子である「納められた月数」をアップさせる
- 分母の「本来納めるべき月数」を減らす
この点は納付率を考える上で大事なところです。
平成28年度の納付率は65%に改善
さて、
次にようやく平成28年度の納付率はどうなったのかという話。
結論、納付率は65%に回復しています。
平成23年度の58.6%の過去最低を底に、徐々に数字上は改善。
現年度分というのは、平成28年度内の納付に限定したものです。
保険料は例え滞納していても、2年まで遡って納められます。
ですので、現年度分の納付率とは別に最終納付率でその年度の納付率が確定することになります。
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分母も分子も減っているのが気になる
さきほど、納付率をアップさせるためには2つのアプローチが必要だと説明しました。
- 分子である「納められた月数」をアップさせる
- 分母の「本来納めるべき月数」を減らす
公表されたデータを見ると、年々、分母が減っています(納付対象月数)。
4年度前に比べて3000万月分も除外しています。
それだけ、免除や猶予を受ける人が増えた証拠です。
ただ、気になるのが同時に分子(納付月数)も減っているということ。
分子は「納められた月数」。
年金の財源となるこの分子部分が増えずして、「納付率」だけが向上しても意味があるのかと疑問に思います。
そういう観点で、現行の年金制度が登場(昭和61年)してからのこのグラフを見ると、一貫して納付月数が減っていることがわかります。
平成1桁台は納付率が80%台を超えていますが、分母も分子も多いので、当時は免除より無理にでも納めようという人が多かったんだなと想像できます。
保険料を納めてもらう対策はどうなってる?
発表されたデータには同時に「公的年金制度全体の状況・国民年金保険料収納対策について」という資料もついていました。
年金機構はどういう対策でもって納付率向上を図っているのか見てみましょう。
納めやすい環境づくりの整備
資料を見てみると、
- 口座振替の推進
- 口座振替による2年前納制度の導入
- クレジットカード納付の導入
- コンビニ納付の導入
- インターネット納付の導入
というのが並んでいます。
どれも平成10年台の後半から導入されたものばかり。
つまり、納付率が下がり始めた平成10年台前半から矢継ぎ早に手を打ってきたわけです。
今では身近になったコンビニ納付ですが、平成16年2月からの導入とのこと。
それまではみんな金融機関で納めていた。
にも関わらず納付率が高かったというのは年金に対する意識は相当高かったんだなと感じます。
納付督励の実施・強制徴収の実施
納めない人に対しては以下の施策を実施しているとのこと。
- 文書
- 電話
- 個別訪問(面談)
これらは市場化テストによる外部委託で民間業者が請け負っています。
そして、
それでも納めないということになると、
恐怖の「強制徴収の実施」となります。
資料を見ると、「財産差押」までいったケースは13,962件もあります。
免除等の周知・勧奨
近年、特に力が入っているのはこの施策じゃないでしょうか。
平成20年台に入ると免除・猶予を、より受けやすくする制度改正が次々に行われました。
資料から代表的なものを挙げてみると、
- 若年者納付猶予制度の導入、納付猶予対象者の拡大
- 免除基準の緩和、免除の遡及承認
- 免除の遡及期間の見直し
- 申請免除の簡素化
- 学生納付特例の申請手続きの簡素化
対象者の拡大、対象期間の拡大、手続きの簡素化がその内容です。
免除のハードルが下がったのは悪いことではないですが、将来の年金額は確実に減ります。
そこを認識した上で利用者が増えているなら問題無いのですが、実際はどうなんでしょうか・・。
今回のニュースまとめ
今回のニュースをまとめると以下のとおり。
- 納付率は国民年金の第1号被保険者だけの数字である
- 納付率は納付された月数の割合である
- 平成28年度の納付率は65%に改善した
- 納付対象月も納付月数も以前より減少している
納付率の現状と国の保険料対策についてまとめてみました。
平成1桁台は高い納付率を誇っていたものの、平成10年台には納付率が下がりだした
平成10年台後半には納付しやすい環境を整えたものの、
平成20年台前半には納付率は最悪の水準へ
免除・猶予のハードルを低くして納付対象月数を減らす施策にも力を入れ
なんとか60%台半ばまで回復
というのがこの20年くらいの歴史と言えます。
納付率が下がりだしたのは、平成10年台の不況の影響もあるでしょうし、我々の認識が変わったというのもあるでしょう。
もちろん、社保庁の不祥事やら記録問題による年金不信もありますね。
納付率改善にはまだまだ時間がかかることでしょう。
ちなみに今回の記事では取り上げませんでしたが、以前の記事で特集した都道府県別の納付率は今回も載っていましたよ。
納付率第1位はやっぱりあの県でしたね。
シモムー
みんなのねんきん主任講師