どんなニュース?簡単に言うと
職員が新型コロナウイルスに感染したため、一時的に閉鎖される年金事務所が後を絶ちません。2021 年8月には延べ 30 の年金事務所がコロナ閉鎖に追い込まれており、累計閉鎖数は 84 カ所にも上ります。そこで今回は、年金事務所のコロナ感染の状況を整理します。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
全国に約 400 ある“顧客対応窓口”
皆さんは、国民年金や厚生年金などの「国の年金制度」はどこが運営しているのか、正しく説明できますか。
「年金制度を運営しているのは“年金事務所”では?」と思う方が多いかもしれませんね。
もちろん、この説明でも間違いとは言い切れないのですが、正確な回答ではありません。
“年金事務所”とは、年金制度を運営する団体の“顧客対応窓口”の名称だからです。
現在、わが国の年金制度は日本年金機構という団体が、厚生労働大臣から委任・委託を受けて運営を行っています。
その日本年金機構の“顧客対応窓口”として、各地に設置されているのが年金事務所というわけです。
年金事務所は全国に 317 カ所あり、地域の皆さんが直接足を運んで、年金の相談や手続きを行える窓口としての役割を果たしています。
また、日本年金機構の組織の中には、一般の方が直接訪問できる窓口として、他にも街角の年金相談センターという場所が、全国に 80 カ所設けられています。
つまり、日本年金機構は一般の方が訪問可能な“顧客対応窓口”を全国に合計 397 カ所、設けているものです。
この年金事務所や街角の年金相談センターで、現在、コロナ閉鎖が頻発しています。
ここがポイント! 「年金事務所」の役割と設置数
日本年金機構は、地域の“顧客対応窓口”として年金事務所 317 カ所、街角の年金相談センター80 カ所を設置している。
2021 年8月に年金事務所の感染職員数が急増
年金事務所や街角の年金相談センターで、新型コロナウイルスに感染した職員が初めて確認されたのは、2020(令和2)年4月3日のことでした。
場所は東京の新宿年金事務所。
60 代の男性職員が体調不良を訴えたために確認したところコロナ感染が判明し、急きょ新宿年金事務所は閉鎖されることになりました。
その後、年金事務所や街角の年金相談センターでの職員感染は、散発的に発生することになります。
状況に変化の兆しが見え始めたのが、2020(令和2)年 11 月。
この頃から、年金事務所などでの職員感染が増え始め、2020(令和2)年 11 月から 2021(令和3)年7月までの9カ月間は、平均で 1 カ月当たり5カ所のコロナ閉鎖が行われることになります。
さらに、状況が一気に悪化するのが、2021(令和3)年8月。
この月には、何と延べ 30 カ所もの年金事務所・街角の年金相談センターが、コロナ閉鎖に追い込まれてしまいます。
2021(令和3)年8月にコロナによる一時閉鎖を行った年金事務所などは、次のとおりです。
職員のコロナ感染により、一時閉鎖に追い込まれた年金事務所などの数の推移を整理すると、次のとおりです。
上記の結果、2021(令和3)年8月 31 日現在、21 都府県で累計 84 カ所の年金事務所・街角の年金相談センターが、コロナによる一時閉鎖を実施したことになります。
前述のとおり、年金事務所と街角の年金相談センターの合計数は 397 カ所です。
そのため、日本年金機構では“顧客対応窓口”の約2割でコロナが発生し、一時閉鎖を余儀なくされたと言えます。
コロナ閉鎖時は近隣の年金事務所に臨時窓口を設置
年金事務所や街角の年金相談センターで職員のコロナ感染が確認されると、施設内を消毒しなければなりません。
そのため、顧客が施設に入れないよう、一時的に閉鎖されることになります。
コロナ閉鎖の期間は、1営業日だけの所もあれば6営業日閉鎖される所もあり、一定していません。
恐らくは、感染の状況などにより、閉鎖日数が変わるのだと思います。
年金事務所の閉鎖中は、直接、訪問して行う手続きは当然できませんが、“単に書類を提出するだけ”であれば可能です。
その際は、もちろん年金事務所の中には入らず、入口の前で書類を提出します。
なお、閉鎖中も年金事務所の電話対応は、通常どおりに実施されています。
また、年金事務所がコロナ閉鎖になった場合には、近隣の年金事務所に「閉鎖された年金事務所の臨時窓口」が設置されます。
この臨時窓口では書類の提出だけでなく、証明書の発行、各種相談なども可能です。
例えば直近では、千葉県にある千葉年金事務所が 2021(令和3)年8月 30 日から同 31日の 15 時までコロナ閉鎖となりましたが、その間は、近隣に所在する幕張(まくはり)年金事務所に「千葉年金事務所の臨時窓口」が開設され、顧客対応が継続されています。
ただし、「閉鎖された年金事務所」と「臨時窓口のある年金事務所」とは、近隣とは言っても通常、徒歩で簡単に移動できるほど近くには立地していません。
そのため、「閉鎖された年金事務所」のかわりに「臨時窓口のある年金事務所」に足を運ぶのは、必ずしも容易ではありません。
なお、上記と合わせて、濃厚接触の可能性がある職員の自宅待機、保健所が行う感染経路や濃厚接触者特定のための調査への協力なども行われています。
(注) 街角の年金相談センターがコロナ閉鎖になった場合の対応は、上記と異なることがあります。
ここがポイント! コロナ閉鎖時の年金事務所の対応
年金事務所がコロナで閉鎖されても、“単に書類を提出するだけ”であれば受け付けてもらえ、電話も通じる。また、近隣の年金事務所に「閉鎖された年金事務所の臨時窓口」が設置される。
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感染職員の約半数が「対面で顧客対応を行う業務」に従事
年金事務所などの職員がコロナ感染した場合には、その年金事務所を訪れていた顧客もコロナに感染することが懸念されます。
そのため、それぞれの年金事務所・街角の年金相談センターで最初にコロナ感染が確認された職員については、「対面で顧客対応を行う業務」に従事していたかどうかの情報が公表されています。
年金事務所などで「対面で顧客対応を行う業務」を「窓口業務」と言うのですが、公表された情報を確認すると、コロナ閉鎖を行った累計 84 の年金事務所・街角の年金相談センターでは、最初に感染が確認された職員の 47.1%が「窓口業務」の担当者であったことが分かります。
つまり、コロナ感染した職員の約半数が、日頃から対面で顧客対応を行っていたわけです。
このような状況を鑑みると、マスクや飛沫防止用のアクリル板が適切に使用されていたとしても、年金事務所を訪問した顧客に一定の“感染リスク”が存在したことは、否定できないように思います。
さらに、同一の年金事務所の中で、時期を異にして別の職員のコロナ感染が確認され、複数回にわたるコロナ閉鎖を実施した年金事務所が 15 カ所、存在しています(2021 年8月31 日現在)。
最も閉鎖回数が多い年金事務所では、これまでに5回のコロナ閉鎖が行われました。
何度もコロナ閉鎖が実施される年金事務所では、当然、足を運ぶ顧客の“感染リスク”も高いと考えざるを得ないのではないでしょうか。
また、そのような年金事務所から届いた郵便物も、「果たして、このまま受け取って大丈夫なのか?」と考えてしまいそうです。
2021(令和3)年8月 31 日現在、複数回にわたってコロナによる一時閉鎖を行った年金事務所は、次のとおりです。
ここがポイント! 年金事務所職員のコロナ感染に伴う“顧客の感染リスク”
それぞれの年金事務所で最初に感染が確認された職員は、約半数が「対面で顧客対応を行う業務」に従事していた。また、コロナ閉鎖が複数回に及ぶ年金事務所もあり、顧客に“感染リスク”が生じていたと考えざるを得ない。
今回のニュースまとめ
今回は、新型コロナウイルスによる年金事務所などの一時閉鎖の状況を見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- 日本年金機構は、“顧客対応窓口”として年金事務所 317 カ所、街角の年金相談センター80 カ所を設けている。
- 年金事務所がコロナ閉鎖になっても、“単に書類を提出するだけ”であれば受け付けてもらえ、近隣の年金事務所に設置された“臨時窓口”も利用できる。
- それぞれの年金事務所で最初に感染が確認された職員は、約半数が「窓口業務」の担当者であり、顧客に“感染リスク”が生じていたと考えざるを得ない。
2021(令和3)年9月に入っても、年金事務所のコロナ閉鎖は収まる気配がありません。
9月3日には神奈川県の平塚年金事務所で、2回目のコロナ閉鎖が実施されたところです。
一日も早くコロナ禍が収束し、安心かつ安全に社会・経済活動を行える日が戻ることを願ってやみません。
出典・参考にした情報源
-
新型コロナウイルス感染者の発生に伴う新宿年金事務所の閉鎖について
続きを見る
-
新型コロナウイルス感染者の発生に伴う千葉年金事務所の閉鎖について
続きを見る
ほか
大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師