どんなニュース?簡単に言うと
2019 年(令和元年)11 月1日、日本年金機構が『被災者専用フリーダイヤル』を開設しました。これは、台風 19 号の被災者専用の「年金相談窓口」です。そこで、今回は『被災者専用フリーダイヤル』の仕組みと、被災者に対する「年金面の支援策」を解説します。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
被災者専用の電話による「年金相談窓口」がスタート
2019 年(令和元年)10 月 12 日に上陸した、大型で極めて強い台風 19 号。
過去最大級ともいわれるこの台風は、東日本地域に記録的な大雨をもたらし、洪水や土砂崩れ、河川の決壊など、広域にわたり甚大な被害が発生しました。
その結果、実に 14 都道府県 390 市区町村が災害救助法の適用地域となりました(2019 年(令和元年)11 月3日現在)。
また、特定非常災害特別措置法に基づく「特定非常災害」、大規模災害復興法に基づく「非常災害」、激甚災害法に基づく「激甚災害」にも指定されています。
このような状況を受け、日本年金機構では 2019 年(令和元年)11 月1日午後2時に『被災者専用フリーダイヤル』を開設しました。
この専用ダイヤルは、被災地域に所在する事業所や国民年金の加入者、年金受給者からの年金に関する相談に、一元的に対応するために設けられたものです。
専用ダイヤルの詳細は、次のとおりです。
【名 称】被災者専用フリーダイヤル
【電話番号】0120‐808‐678
【受付時間】
- 月 曜 日:午前8時 30 分~午後7時
- 火~金曜日:午前8時 30 分~午後5時 15 分
- 第2土曜日:午前9時 30 分~午後4時
電話をかけると音声案内が流れ、相談内容に応じて次のとおり番号を選びます。
- 年金の受給に関する相談 …「1」を選ぶ
- 国民年金の保険料納付などに関する相談 …「1」を選ぶ
- 厚生年金の保険料納付などに関する相談 …「2」を選ぶ
日本年金機構では、これまで次のような4度の天災に対して『被災者専用フリーダイヤル』を開設し、被災者対応を実施してきました。
- 2011 年(平成 23 年)3月 東日本大震災
- 2016 年(平成 28 年)4月 熊本地震
- 2018 年(平成 30 年)7月 西日本豪雨災害
- 2018 年(平成 30 年)9月 北海道胆振東部地震
従って今回は、日本年金機構としては5度目の「災害に伴う専用ダイヤル」の開設となるものです。
また、参考までに以下のリンクは当時のみんなのねんきんブログでご紹介したコラムです。
ここ数年は専用ダイヤルを設ける災害が多発していることがわかります。
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国民年金の保険料納付に関する支援策
それでは、台風 19 号の被災者および被災事業所に対する具体的な「年金面の支援策」を見てみましょう。
初めに、国民年金の保険料納付に関する支援策は、次のとおりです。
1.「災害による特例免除」の利用
自営業者などの国民年金の第1号被保険者には、国民年金保険料を納める義務が課せられています。
ただし、台風 19 号によって一定の被害を受けた場合には、保険料の納付が全額免除される制度の利用が可能です。
この仕組みを「災害による特例免除」といいます。
具体的には、住宅、家財、その他の財産について、被害金額がおおむね2分の1以上の損害を受けた場合、申請により国民年金保険料の納付が免除されることになります。
市区町村または最寄りの年金事務所に申請書類を提出すれば、この制度の利用が可能になります。
2.保険料の口座振替の停止
国民年金の保険料は現金で納める方法のほかに、口座から振り替える方法が認められています。
しかしながら、台風 19 号により被災をして、今後の保険料納付が困難になった場合には、口座振替を停止することも可能です。
手続きは、最寄りの年金事務所または振替先の金融機関に連絡を取ることにより行えます。
ただし、連絡の時期によっては停止が間に合わないこともあるようなので、希望する場合には早めに連絡を取ったほうがよさそうです。
厚生年金の保険料納付に関する支援策
被災事業所に対しては、厚生年金の保険料納付に関する次のような支援策が講じられることになりました。
1.厚生年金保険料などの納付期限の延長
通常、厚生年金の保険料は翌月末日が納付期限とされており、期限までに納付をしないと督促などが行われることになっています。
しかしながら、台風 19 号の被災地域のうちの“一部の地域”については、2019 年(令和元年)10 月 12 日以降に期限の到来する厚生年金保険料などの納付期限が延長されることになりました。
具体的には、厚生年金保険料、協会けんぽの健康保険料、子ども・子育て拠出金などを期限延長の対象にすると発表されています。
従って、納付期限延長の対象地域に所在する事業所では、当面の間、厚生年金保険料などを納付しなくても大丈夫ということになります。
新しい納付期限がいつになるかは、被災地の復興状況を見て後日、厚生労働省が決定するため、現時点では決まっていません。
また、期限が延長されている間は、対象地域の保険料の口座振替が全面的に停止され、かわりに納入告知書が送られてきます。
そのため、保険料を納付できる事業所の場合には、納入告知書を使って現金で保険料を納めることになります。
被災地域のうち「納付期限が延長される対象地域」は、次のとおりです。
2. 保険料の口座振替の停止
納付期限延長の対象外の地域に所在する事業所の場合には、保険料の納付期限は通常どおり、翌月末日で変わりがありません。
ただし、このような事業所でも被災により保険料納付が困難になった場合には、希望をすれば次回の保険料の口座振替をストップすることが可能です。
具体的には、口座振替日の5営業日前までに管轄の年金事務所に申し出れば、口座振替は行われないことになっています。
万一、口座振替日まで5営業日ない場合には、直接、振替先の金融機関に口座振替停止の相談をする方法もあるようです。
3.保険料の「納付の猶予」
納付期限延長の対象外の地域に所在する事業所で、被災により保険料納付が困難になった場合には、保険料の「納付の猶予」を受けられることがあります。
保険料の「納付の猶予」とは、事業所の個別の事情を考慮して、保険料の納付をしばらく待ってもらえる制度です。
「災害により財産に相当な損失を受けた場合」や「災害による事業の悪化などにより、一時に保険料を納付することが困難であると認められる場合」に、“1年”を限度に保険料の納付が待ってもらえることになります。
納付が猶予されている間は、保険料を通常どおり納めなくても滞納処分などが行われることはありません。
希望する場合には、管轄の年金事務所で相談を受けることができます。
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年金の受給に関する支援策
最後に、年金の受給に関する支援策を見てみましょう。
1.各種届書の提出期限の延長
2019 年(令和元年)10 月 12 日時点で災害救助法の適用地域に住む年金受給者のうち、誕生日が 10 月1日から2月 29 日までの人について、「現況届」「生計維持確認届」「障害状態確認届」の提出期限が、2020 年(令和2年)3月 31 日まで延長されることになりました。
「現況届」とは、日本年金機構にマイナンバーを届け出ていない年金受給者が、年に1回、生存確認のために提出を義務付けられている書類です。
「生計維持確認届」は、加給年金額などが付いた年金の受給者が、年に1回、家族の生計維持の状況を確認するために提出を義務付けられています。
「障害状態確認届」とは、障害年金の受給者が現在の障害状態を確認するために、あらかじめ指定された年に提出を義務付けられているものです。
いずれの書類も、通常は誕生月の末日が提出期限であり、期限までの提出を怠ると、年金の支払いが一時差止めになることがあります。
しかしながら、提出期限が延長されたため、被災により書類の提出が困難な状況でも、年金が差止めにならずに済むことになります。
2.所得制限による年金支給停止の解除
年金の中には、一定の所得があると支払いを受けられないものがあります。
しかしながら、災害救助法の適用地域に住む年金受給者が、所得制限により年金の一部または全部が停止されている場合には、住宅、家財またはその他の財産がおおむね2分の1以上の損害を受けているのであれば、損害を受けた月から 2020 年(令和2)年7月までの年金は支払われることになりました。
具体的には、「20 歳前に初診日がある傷病の障害基礎年金」「老齢福祉年金」「特別障害給付金」について、所得制限による支給停止が解除されることになります。
ただし、申請が必要なので、最寄りの年金事務所で手続き方法を確認する必要があります。
なお、2020 年(令和2年)8月頃に 2019 年(令和元年)の所得確認を行い、年金の所得制限額を超えていたことが判明した場合には、損害を受けた月まで遡って、あらためて年金の支払いが停止されるため、注意が必要です。
3.年金の「窓口受け取り」の特例措置
年金の受取方法には口座振込の他に、「ゆうちょ銀行の店舗や郵便局の窓口で受け取る」という方法があります。
具体的には、日本年金機構から届いた「送金通知書」という書類を、自分があらかじめ指定したゆうちょ銀行の店舗や郵便局の窓口に持参することで、年金を受け取ることが可能になるものです。
ただし、災害救助法の適用地域に住む年金受給者の場合には、ゆうちょ銀行の店舗などでの年金の受け取りについて、2020 年(令和2年)1月 31 日までの間、次の特例的な措置を受けることができます。
- 被災により「送金通知書」を無くしても、年金が受け取れる。
- あらかじめ指定したゆうちょ銀行の店舗や郵便局の窓口で年金を受け取ることが難しい
場合、他の店舗や窓口で年金が受け取れる。
なお、年金を口座振込で受け取っている場合で、被災のために預金通帳、印鑑、キャッシュカードなどを無くした場合には、金融機関に現金引き出しの方法を相談してほしいとのことです。
今回のニュースまとめ
今回は、台風 19 号の被災者のために日本年金機構が開設した『被災者専用フリーダイヤル』の仕組みと、被災者に対する「年金面の支援策」を見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- 2019 年(令和元年)11 月1日、日本年金機構が台風 19 号の被災者のための専用相談窓口として、『被災者専用フリーダイヤル』を開設した。
- 被災者支援策として国民年金の保険料納付については、「災害による特例免除の利用」「口座振替の停止」が可能になった。
- 厚生年金の保険料納付については「納付期限の延長」が行われ、「口座振替の停止」「納付の猶予」も可能になった。
- 年金の受給については、「届書の提出期限の延長」「所得制限による年金支給停止の解除」「年金の窓口受け取りの特例措置」が行われた。
このたびの台風 19 号による被害に遭われた皆さまへは、謹んでお見舞い申し上げます。
ぜひ、年金に関する被災者支援策を有効活用していただき、一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
出典・参考にした情報源
日本年金機構ウェブサイト:
令和元年台風第 19 号により被害を受けられた皆さまへ
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2019/20191023.html
災害救助法の適用地域
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2019/20191023.files/03.pdf
大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師