どんな事例?簡単に言うと・・
個人型確定拠出年金(iDeCo)にiDeCo+(イデコプラス)という仕組みがあります。
今回、みんなのねんきんの運営会社(一般社団法人次世代ウェブ教育開発研究機構)で導入してみました。
制度の仕組み、導入の流れ、メリットをご紹介しながら、イデコプラスがどういうものかをレポートします。
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こんな事例を考えてみましょう
ひょんなことからiDeCo+に興味を持ったシモムー。
現在は自身でiDeCoに加入し、上限の月額23,000円の掛金を拠出して老後資金を運用しています。
事業主にも従業員にもメリットがあると言われるiDeCo+。
この制度を実際に導入した体験事例です。
今回の事例の何が問題なんでしょうか
2018年5月に施行されたiDeCo+
中小企業のみが活用できる仕組みで、iDeCoに入る従業員と事業主の双方にメリットがある仕組みと言われています。
一体どんなメリットがあり、どのような手続きが必要か。
そして、最も大きな問題は、代表者1人のみの会社で、その代表者がiDeCoに入っている場合、このiDeCo+を使えるのか?
という点。
これらが問題となります。
メモ
弊社には「みんなのねんきん事務局」のメンバーがいますが、直接雇用しているわけではないので、社員はシモムー1人だけという組織です。
解説してみましょう
iDeCo+とはなんぞや?
まずは、iDeCo+とはどのようなものなのか解説しましょう。
一言で言えば、iDeCoに入っている従業員の資産運用を事業主が支援できる仕組みです。
従業員はiDeCoで節税しながら老後資金を準備できるメリットがあります。
事業主の支援によって、iDeCoに入る動機づけになれば、iDeCo加入者が増えて国にとってメリットになります。
もちろん、事業主の支援を引き出すためには事業主にもメリットがなければいけません。
そこで事業主には税制上のメリットが用意されています。
というわけで、iDeCo加入者、国、事業主、「三方よし」の仕組みなのです。
従業員の掛金に事業主がプラスする
もう少し具体的に見ていきましょう。
まず、会社規模は300人以下であることが必要。
この仕組みができた当初は100人以下でしたが、すぐに人数要件が緩和されて300人以下となりました。
そして、会社が企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)を実施していないことが必要です。
このような会社で働く従業員は、個人でiDeCoに入ることになり、掛金の上限は月額23,000円となります。
この上限23,000円の範囲内で従業員の掛金に事業主が上乗せ(プラス)できる仕組みなのです。
事業主のメリットとは?
つぎに、事業主のメリットを見てみましょう。
これはズバリ、掛金全額が経費(税務上は「損金」)として認められる=法人税の節税になるということ。
会社が利益が出ている状況なら、これは見逃せない節税策となります。
また、従業員に対する福利厚生をアピールできるというメリットもあるでしょう。
ちょっと間違えただけでもやり直し!シビアすぎる手続き
手続きの流れを確認しましょう。3つのステップで書類を提出します。
- 事業主の預金口座から納付できるように事前登録をする
- 国民年金基金連合会にiDeCoプラス開始の届出を出す
- 自身が加入する運営管理機関に掛金変更の届出を出す
国民年金基金連合会と運営管理機関、2箇所に手続きをしなければいけない点に注意です。
1 事業主の預金口座から納付できるように事前登録をする
iDeCoの掛金納付は事業主が代わりに給料から掛金を天引きして納付する方法と加入者自身が掛金を納める方法があります。
iDeCoプラスは事業主が掛金をプラスにする仕組みのため、必ず前者の方法をとる必要があります。
以下のページで申請書をダウンロードできます。
この申請書を国民年金基金連合会に送付すると、以下の登録証が届きます。
口座名義がちょっと違っていたようで、一度差し戻しがあり、2回目で無事に登録完了しました。
(すでに事業主が掛金を納めているならこの「1」の手続きは必要ありません)
2 iDeCoプラス開始の届出を出す
さて、ここからがiDeCoプラス手続きの核心部分。
掛金額や従業員の同意を取り付けて書類一式を提出します。
iDeCoプラスによる掛金の上乗せは全員を対象にする必要はなく、一定の資格を設けることができます。
例えば、「勤続年数が3年以上で対象となる」というルールを作れますが、その場合は提出書類が変わるので注意です。
今回は、シモムー1人が対象となるので「資格なし」ということで書類を提出しました。
詳しくは以下のページで確認してください。
-
規約・届書様式|ライブラリ|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
老後のためにいまできること、イデコ。個人型確定拠出年金『iDeCo』は、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金です。
www.ideco-koushiki.jp
ここでは、書類提出にあたり特徴的な部分についてのみ触れます。
え?従業員の掛金を1,000円にできる?
繰り返しになりますが、企業年金が無く厚生年金加入のみの場合は月額23,000円が掛金の上限となります。
そして、下限は5,000円。
とすれば、シモムー自身の掛金は最低5,000円となり、会社は18,000円を上乗せできる と当初考えていたのです。
ところがこれは間違っていました。
加入者と事業主の拠出の合計が5,000円以上23,000円以下と設定すればよく、従業員の掛金の最低額は1,000円として設定できるとのこと(この場合は、下限5,000円に達するよう、事業主は最低でも4,000円上乗せする必要がある)。
というわけで、最終的に
- シモムー:1,000円
- 会社:22,000円
という金額設定にしました。
1人しかいないけど同意書のサインはどうする?
iDeCoプラスは決定した掛金額に対し、労働者代表者の同意が必要です(画像赤枠部分)。
したがって、代表者が自署した同意書の提出が必須なのですが、会社代表者であるシモムー1人しかいません。
この点は、1人しかいない会社なのでシモムーのサインでOKとのことでした。
少しでも間違えると差し戻し
iDeCoプラスの開始届一式ですが少しでも不備があると、すべての書類が差し戻されてしまいます。
手続きの途中、2回差し戻されて、一体いつになったら始まるのかとうんざりしたものです。
例えば、送付書類には「中小事業主掛金納付制度 各種届書 送付状」を添付しないといけません。
この送付状にはどういう用紙を何枚送るのか、その枚数を書くだけのものですが、うっかり入れ忘れたところ、差し戻されました。
と思ったのですが、まぁ、仕方ありません。
その都度、コールセンターに連絡して不備の内容を確認して進めました。
3 運営管理機関に掛金変更の届出を出す
最後の手続きは現在お世話になっている運営管理機関への届出です。
具体的には
- 事業主払込に変更する届出
- 掛金変更の届出
の2つ。
ここで問題となったのは掛金の変更です。
実は掛金の変更は1年に1回しかできません。既に1回変更していたので、まさかこの縛りのせいでiDeCoプラスの導入ができないのではないかと焦りました。
結論、iDeCoプラスの開始に際しては問題ないとのことでした。
また、
ここでも不備戻しが発生。
国民年金基金連合会にも行くものなので書類の審査はシビアになるとのこと。
例えばたった1箇所日付を入れなかっただけで戻されるという始末。
こうして、全部で4回も差し戻しを受けてなんとか手続きを完了させることができました。
始まったiDeCoプラス!従業員と会社のメリットの両方を実感
7月に事前登録から手続き開始をして、iDeCoプラスによる掛金の引き落としは11月27日から開始。
半年も掛かってしまいました。
もっと注意深く書類を作成していればこんなに長くかかることはありません。
国民年金基金連合会からの通知はこちら。
確かに、シモムーの掛金(加入者掛金)は1000円、会社の掛金(事業主掛金)は22,000円となっていることがわかります。
シモムー自身は、これまで自分の財布から23,000円を拠出していたのですが1000円に激減。毎月自由になるお金が22,000円増えました。
会社は22,000円の負担をすることになりましたが、この拠出は全額経費となるので法人税の節税となります。
シモムーは掛金の総額は変わらないまま、会社の援助のお陰でこれまで通りの老後資金の準備ができます。
このように、iDeCoプラスは社長1人の会社でもメリットだらけの仕組みだと実感しています。
今回の事例まとめ
今回はiDeCoプラスの手続きの流れとそのメリットをまとめました。
ポイントは以下のとおり。
- iDeCoプラスはiDeCoに入っている従業員の資産運用を事業主が支援できる仕組み
- 300人以下の企業年金のない会社が導入可能。社長1人だけの会社でもOK
- 手続きの流れは3ステップ。少しでもミスがあると不備戻しされる
- 従業員は会社の援助で老後資金の準備ができ、会社は節税できて双方にメリットがある
2024年からは新NISA制度が始まり、私シモムーもiDeCoと一緒に資産運用に励んでいます。
アメリカ株とゴールドの値上がりがすごく、現時点では運用はうまくいっています。
今後は値下がりする機会も出てきますが、その際は安く買えるので長期的な視点でコツコツ続けていくつもりです。
やはり、税制上のメリットを享受できるというのがどちらの制度でもありがたい仕組みですね。
私はNISAとiDeCoで老後の前半をなんとかし、その間、公的年金を繰下げ待機し、老後の後半は繰下げた公的年金で老後をまっとうするという戦略でいます。
そのためには早いうちから投資を始めておく必要があると考えて数年前からiDeCoを本格的に始めた次第。
公的年金と合わせて長くなるであろう老後に備えたいと思います。
事例は実際の相談をヒントにしたフィクションを含みます。特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。
シモムー
みんなのねんきん主任講師