写真の出典:left-hand
どんな事例?簡単に言うと・・
”どこいったニャー”シリーズ第3弾。今回は2016年度から全ての人に関わる新しくなった年金額ルールをご紹介します。年金計算の端数処理が変わったということなんですが・・。
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こんな事例を考えてみましょう
農家のMさんは若い時からいちご栽培一筋。
M農園は春先にはいちご狩りで大盛況となります。
お隣のOさんも若い時からいちご栽培一筋。
O農園も春先にはいちご狩りで大盛況となります。
2人は今年で68歳の同い年。
年が同じの2人は若い時からライバル関係。
何でも競いあってきました。
国民年金制度から受け取れる老齢基礎年金もその一つ。
ただ、Oさんが納めた月数は1カ月分だけMさんより少ない。
Oさん458カ月納付に対して、Mさんは459カ月納付。
Oさんは悔しい思いをしてきました。
ある日のこと。
2016年度の年金額は2015年度から据え置きというニュースを2人は耳にしました。
増えないのも困るけど、減らないならまぁいいかと安心していました。
そして、2016年6月。
新しい年度の最初の振込がありました。
いつも通り年金の振込額を通帳で確認したところ、異変が起きています。
Mさんの年金は昨年より5円少なく、逆にOさんの年金は7円増えています。
溜飲を下げたOさんに対し、Mさんは怒り心頭。
去年と同じはずなのに俺の5円はどこ行ったニャー!
Mさんが年金機構に牙をむきました。
今回の事例の何が問題なんでしょうか
今回の事例。
確かに、2016年度の年金額は2015年度と同じ計算式になります。
ところが、人によっては昨年度と比較して、振込額が増えたり減ったりするというおかしな現象が起きます。
2015年度の最初から受け取っている方が2016年度を迎えるとこんなことになるんです。
実は端数処理の仕組みが変更されたことが原因。
年金額を決定するための端数処理がどのように変わったかが問題となります。
解説してみましょう
今回の解説者:シモムー
年金計算の端数の処理は3つのタイミングがある
年金を計算する上で端数を処理するタイミングが3つあります。
- 年金額計算の途中での端数処理
- 年金額を最終決定する上での端数処理
- 国が年金を払う時の端数処理
原因は「2」の端数処理が変更になったから。
具体的にMさんとOさんのケースで1から3の端数処理を考えてみましょう。
年金額計算の途中での端数処理
MさんとOさんが受け取っている老齢基礎年金。
これは20歳から60歳まで毎月隙間なく40年間(480カ月)納めて満額を受け取れるものです。
2016年度は780,100円が満額です。
1ヶ月でも滞納した期間や、保険料の免除の期間があると満額になりません。
満額にならない場合は、満額となる480カ月に対して何ヶ月の保険料が納まっているか、その割合で金額が決まります。
老齢基礎年金 = 満額 × 納めた月数 / 480
滞納した場合は「納めた月数」に全く反映しません。
そりゃ、当然です。
免除を受けた場合はその種類に応じて1カ月分ではなく、0から8分の7カ月分として評価されます。
0として評価というのは年金額に反映しない免除のこと。
典型的な例は学生という立場で保険料納付の猶予を受けた場合です。
だから学生が終わったら速やかに納めないと老後に影響するんですね。
Mさん、Oさんの事例はわかりやすくするために、保険料を滞納したことにしています。
さて、
この分数を計算する途中で端数が出ます。
その場合は50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げて1円単位に丸めます。
小数点以下を四捨五入するということです。
Mさんの場合
780,100円 × 459 / 480 = 745,970.625・・
≒ 745,971円
Oさんの場合
780,100円 × 458 / 480 = 744,345.416・・
≒ 744,345円
年金額を最終決定する上での端数処理
年金額を最終決定する時には100円単位とする端数処理をしていました。
「いました。」なので、既に過去の話です。
具体的には50円未満を切り捨て、50円以上を切り上げていたんです。
ところが、最後の100円単位とする処理はしなくなりました。
2015年10月以降、年金額を決定・改定する人から新しい処理となっています。
これは公務員の年金と民間サラリーマンの年金が厚生年金に一元化されたため。
両制度のルールを揃えたんですね。
毎年4月になると全員が新年度の年金額に改定する。
ですから2016年4月をもって、全員が1円単位での年金額で最終決定となるわけです。
Mさんの場合
2015年度 → 745,971円 ≒ 746,000円
2016年度 → 745,971円
Oさんの場合
2015年度 → 744,345円 ≒744,300円
2016年度 → 744,345円
国が年金を払う時の端数処理
年金額は年額で決定します。
この年額を2カ月に1回受け取っていくわけですから6で割らないといけません。
6で割った際の端数は切り捨てというルールになっています。
そもそも、6で割る前の金額が2015年度と2016年度とでは異なる。
ですので、最後の受取額にも差が生じたということになります。
Mさんの場合
2015年度 → 746,000円 ÷ 6 ≒ 124,333円
2016年度 → 745,971円 ÷ 6 ≒ 124,328円
前年度比5円マイナス
Oさんの場合
2015年度 → 744,300円 ÷ 6 ≒ 124,050円
2016年度 → 744,345円 ÷ 6 ≒ 124,057円
前年度比7円プラス
今回の事例まとめ
年金計算における端数処理のルールの変更。
この記事を執筆したのは2016年4月です。
新年度4月分の年金振込は6月ですが、その際には牙をむくケースが結構出てくるんじゃないかと思います。
Mさん、Oさんのように泣く人、笑う人それぞれいます。
これは、年金額を実際に計算してみないとわかりません。
ただし、
計算するまでもなく、絶対変更が無いという人がたった1人います。
それは・・。
満額でもらえる人。
やっぱりきちんと納めてきた正直者は報われるということでしょうか・・・。
余談ですが、受取額を6倍しても元の年金額に戻らないという不具合があります。
その不具合は解消されています。
以前の記事でまとめたことがあるので参考にしてください。
※参考 俺の2円はどこ行ったニャー! (どこ行ったニャーシリーズ第1弾)
事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。