出典記事が発表された日:2016年5月16日
どんなニュース?簡単に言うと
2016年10月よりパートタイマー・アルバイトの社会保険加入の条件が緩くなります。施行まであと半年というところで、日本年金機構より事業主向けに情報提供がされました。詳しい内容をシモムーが解説してみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
2016年(平成28年)10月より、パートタイマー・アルバイトの社会保険加入の条件が緩くなります。
社会保険といえば、公的な医療保険である健康保険と厚生年金保険のセットのこと。
一定の条件に合えば、短時間で働く人たちも社会保険に加入しないといけません。
片方だけしか入りたくないというのはナシです。両方入らないといけません。
10月まであと半年。
この状況下で、日本年金機構が事業主向けにリーフレットを公表しました(出典のURLは末尾に紹介しています)。
チラシの中身をシモムーの視点で解説してみます。
2つのステップで考える社会保険の加入
社会保険に入るかどうかは2つのステップで考えないといけません。
- 勤める会社が社会保険に入る会社なのか
- そこで働く人が社会保険に入るにふさわしいか
そもそも、1で言う社会保険に入る会社でなければ、どんなに2で長時間働こうとも社会保険には入れません。
そこで、まずは会社の視点から、社会保険に入る会社かどうかを考えてみましょう。
条件が緩くなる会社は規模の大きな会社だけ
今回の条件緩和はどの会社も対象になるわけでないんです。
一言で言えば、規模の大きな会社。
リーフレットにはこうあります。
同一事業主の適用事業所の厚生年金保険の被保険者数の合計が1年で6カ月以上、500人を超えることが見込まれる場合は、特定適用事業所として短時間労働者の適用拡大の対象となります。
企業規模が500人を超えるかどうか
社会保険の対象となる会社のことを適用事業所と専門用語で言います。
今回の10月から要件が緩くなった適用事業所を「特定適用事業所」と呼び、普通の会社と区別するんです。
どうしたら特定適用事業所となるか。
要は会社の規模が500人を超える(501人以上)となると該当します。
もう少し具体的には、
「被保険者数の合計が」と言っていますので、
社会保険に入るだろう人が500人を超える会社が対象だと言っています。
同じ事業主単位で500人を判断する
「うちの支店は300人だから関係ないな・・。」
というわけではなくて、同じ事業主単位で考えると言っています。
リーフレットの図表を引用してみましょう。
適用事業所というのは本来は、各地域の支店や工場ごとの単位で考えます。
場所を単位にすることで、各地域の年金事務所が各事業所を把握できるようにするためです。
しかし、
リーフレットの説明にもあるように同一の事業主であれば、各支店は「特定」適用事業所となるとのこと。
全国展開している会社は各支店の合計でもって判断されることになります。
パートタイマーが社会保険の対象になる4つのポイント
では次に、そこで働く労働者の視点で社会保険への加入を考えてみましょう。
4つのポイントがあります。
- 週にある程度長く働くのか?
- これからも長く勤務する契約なのか?
- 給料がある程度もらえるか?
- 本業が学生ではないか?
4つのポイント全てに該当しないといけません。
1つずつポイントを見ていきましょう。
ポイント1 週に20時間以上働く
今回の条件緩和の大きなポイントはここです。
週に20時間以上働くパートタイマーは社会保険の対象となります。
従来は労働時間が一般の労働者と比較して4分の3以上となると加入するというルールでした。
一般の労働者は労働基準法により原則として週に40時間を超えて働くことができません。
ということは、
その4分の3である30時間以上働くと対象になっていたわけです。
ポイント2 1年以上雇われる見込み
1週間に20時間働くパートタイマーでも、契約期間が3カ月限りとか、半年限りということでは対象になりません。
1年以上雇われる契約であれば対象になります。
また、例え明確に「1年」と決まっていなくても、次の場合も同様です。
- そもそも契約期間を決めていない
- 契約更新の可能性がある契約をしている
1はいわゆる「正社員」の人たちがこの形態です。
契約期間を決めないので当事者がいつでも契約を終了させることができます。
だからと言って簡単にはクビにできないのはご存知のとおり。
ただ、パートタイマーで契約期間が無いというケースは珍しいと思います。
2は契約が更新される可能性があるなら、「1年以上」に準じて考えようということ。
1年未満の契約期間でも、多くの場合は更新の規定があることがほとんどだと思います。
ポイント3 月額8.8万円以上もらう
諸手当込みで月給換算88,000円以上もらうことになると対象です。
半年に1回ボーナスが出るなんて場合はこの月額には含めません。
いわゆる通常の状態である程度の給料をもらっていないと対象にしないということです。
ちなみに、
社会保険での自分の給料はキリの良い数字にして登録されます。
給料の金額によって等級表に当てはめるのですが、新しく「88,000円」というキリの良い数字が加わることになりました。
リーフレットの図表を引用します。
ポイント4 本業が学生であれば対象外
最後は学生アルバイトは対象外ということ。
ただし、
昼間働いて、夜に授業を受ける定時制の高校とか夜間の大学生だと対象になります。
仕事が中心の生活だから「労働者」としての性格が強いということでしょう。
社会保険加入条件緩和のメリット・デメリット
保険料に対する年金が多くてコスパが高い
メリットとしては、社会保険に入れば将来もらえる年金が増えるということ。
これは当たり前です。
加えてもっとも注目すべきはそのコストパフォーマンスではないでしょうか。
例えば給料が月額8.8万円の場合、そこに保険料率約18%を掛けて、会社と折半した額が厚生年金の保険料です。
88,000円 × 18% × 1/2 = 7,920円
これだけの負担で厚生年金1カ月分となり、さらに20歳以上60歳未満の期間であれば国民年金1カ月分にもなります。
国民年金の保険料は月に約16,000円です。
半分の負担で2つの年金に反映すると考えればこれはお得です。
負担が増えるのがデメリット
これが一番大きなデメリットでしょう。
給料の月額8.8万円は年間だと105万6,000円。
社会保険における扶養の範囲は年130万円未満ですから、従来であれば保険料の負担がなかったわけです。
しかも、
社会保険は健康保険と厚生年金のセットですから、年金だけ負担するというわけにはいきません。
また、
会社にとっても負担が大きい。
というわけで、規模が大きな企業だけに限定したいきさつがあります。
今回のニュースまとめ
今回のニュースは
パートタイマー・アルバイトが社会保険加入する条件が緩和されるということで2つのステップで見ていきました。
- 勤める会社が社会保険に入る会社なのか
- そこで働く人が社会保険に入るにふさわしいか
1のポイントは以下のとおり。
- 被保険者の数が500人を超える見込みであれば特定適用事業所になる
- 支店単位ではなく、事業主単位で人数規模を考える
2のポイントは以下のとおり。
- ポイント1 週に20時間以上働く
- ポイント2 1年以上雇われる見込み
- ポイント3 月額8.8万円以上もらう
- ポイント4 本業が学生であれば対象外
という内容でした。
今回のリーフレットは事業主向けのアナウンスになっています。
合わせて、よくある質問と回答も掲載されていますので、企業で担当される方は参考になると思いますよ。
出典・参考にした情報源
日本年金機構HP
シモムー
みんなのねんきん主任講師