何が出題されている?
出題形式:算入されないものを選択(2018春まで・2019秋)、適切な語句の組み合わせの選択(2018秋・2019春・2020春(模擬)・2020秋・2021春・2021秋・2022春)
この問題は昔から特別で、誤りや正しい肢を選択するのではありません。
”年金を受け取るための期間になるか、ならないか”が問われます。
2018春までは「60歳以上」というキーワードを探すだけで一気に答えが出るサービス問題だったのですが、2018秋からサービスは終了。
全く違う形式の問題として登場しました。
これから先はどうなるか?
と思っていたのですが、2019秋には元に戻りました。そして2020春からは再び穴埋めへ。
最後は2022秋に出題がなくなりました。
一体どうしたいのか、ハッキリ言って迷走しています。
そんな事情を前提に分析をしてみます。
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過去の正解となった知識
- 以後出題なし
- 2022秋 出題なし
- 2022春 学生だった期間の合算対象期間、在外邦人が海外に居住していた場合の合算対象期間、保険料納付猶予制度
- 2021秋 脱退手当金受給による合算対象期間、任意加入した在外邦人の合算対象期間
- 2021春 脱退手当金受給による合算対象期間、日本の永住許可取得者の合算対象期間
- 2020秋 日本の永住許可取得者の合算対象期間、学生だった期間の合算対象期間
- 2020春(模擬)日本国籍取得者の合算対象期間、学生だった期間の合算対象期間
- 2019秋 60歳以上で任意加入して滞納しても受給資格期間に算入されない
- 2019春 日本国籍取得者の合算対象期間、学生納付特例を利用して追納しなかった期間、学生だった期間の合算対象期間
- 2018秋 日本国籍取得者の合算対象期間、学生だった期間の合算対象期間
- 2018春 60歳以上で任意加入して滞納しても受給資格期間に算入されない
- 2017秋 60歳以上で任意加入して滞納しても受給資格期間に算入されない
私が受験を始めた10年以上前から出題があったテーマですが、ついに2022秋に消滅しました。
そもそも合算対象期間は年金額には反映しないものの、受給資格期間には反映させるという特殊な期間。
受給資格期間として25年を要求していた時代ではそれなりに意味のある期間でしたが、この令和の時代では10年あれば受給資格を満たすのでその必要性が低下していることが未出題の背景かもしれません。
まずは、一体どんな合算対象期間が出題されてきたかを集計してみました。
メモ
紙の試験では出題が途絶えているのですが、CBT試験では出題がされているのでここで取り上げています。
過去の出題でよく出る合算対象期間とは
過去12回に遡り、どんな合算対象期間が問われるのかをまとめてみました。
第1位 | 11 | 学生が任意加入しなかった期間 学生で任意加入したが納付しなかった期間 |
第2位 | 9 | 外国人が日本国籍(永住許可)を取得した場合の取得までの海外在住期間 |
第2位 | 9 | 在外邦人が海外に居住していた期間 在外邦人が任意加入したが納付しなかった期間 |
第4位 | 7 | 被用者年金制度の加入者の配偶者で任意加入しなかった期間 被用者年金制度の加入者の配偶者で任意加入したが納付しなかった期間 |
第5位 | 6 | 学生納付特例の適用を受けたが追納しなかった期間 |
第6位 | 4 | 納付猶予制度の適用を受けたが追納しなかった期間 |
第7位 | 3 | 60歳以上で任意加入したが納付しなかった期間 |
3 | 外国人が永住許可を受けて任意加入したが納付しなかった期間 |
学生納付特例と納付猶予制度は合算対象期間ではないですが、追納しなければ年金額に反映せず、合算対象期間のようなものなので、このテーマで出題がされています。
穴埋め形式で出題される場合は出題が偏っていて、
- 学生が任意加入しなかった期間
- 外国人が日本国籍(永住許可)を取得した場合の取得までの海外在住期間
が出題の中心となっています。
2021春、2021秋はマイナーな脱退手当金の合算対象期間が出ました。
出題傾向から年金制度を考える
個々の合算対象期間を押さえる前に、共通事項を理解しておきましょう。
任意加入制度と合算対象期間の趣旨
そもそも合算対象期間として、年金受給のための資格期間に算入するのは理由があります。
今でこそ、原則20歳以上の全ての人は強制的に年金制度に加入する仕組みですが、昔はそうではありませんでした。
いろいろな事情があって、「あなたは入れません」とか「入る入らないはあなたの自由」という時代がありました。
その後、昭和61年4月からの現行制度が始まってからは、ほとんどの人が強制加入させられました。
現行制度が始まって間もない頃は強制加入期間だけでは年金をもらうための条件を満たせません。
ですので、強制でなかった時代のいろいろな期間を合せて、受給資格期間を満たせば年金をあげようとなりました。
ただ、当然のこと、その期間は保険料を納めていないので年金額に反映させるわけにはいきません。
年金額には反映しないけど、条件面としての年金をもらうための期間には加えてくれる。
それが合算対象期間です。
任意加入してから滞納しても合算対象期間?
以前は、
せっかく任意で加入しても、その後に滞納すると、その期間は単なる未納期間となっていました。
未納期間は年金をもらうための期間には算入されません。
”自分の意思で加入の道を選んだから滞納して年金に結びつかないのも自己責任”という考え方でしょう。
ところが、
平成26年4月から任意加入後の滞納期間も合算対象期間になるという取り扱い変更がありました。
当時、年金への意識が低く、任意加入しなかったとしても、その間は年金をもらうための期間に算入される。
逆に
当時、年金への意識が高くても、任意加入後に滞納してしまったら年金に結びつかない。
後者も救済しないと不合理であるという考え方だろうと想像できます。
ですので、任意加入後に滞納しても合算対象期間になります。
ただ、1点気をつけないといけません。
それは、加入しまいが、加入後滞納しようが合算対象期間として認められるのは強制適用の年齢期間(20歳以上60歳未満)のみです。
合算対象期間として認められるのは”20歳以上60歳未満の期間”に限定
ここはしっかり頭に入れます。
この点を突いた正解が長らく続いていました。
だから、「60歳以上」というキーワードを探せば、それが正解になっていたんです。
穴埋め形式でない出題の場合はこのキーワードが重要です。
2021秋もこの点で穴埋め「20歳以上60歳未満」が正解となりました。
20歳以上65歳未満
は、間違いということがわかりますね。
個別の合算対象期間の理解
やみくもに多種多様な合算対象期間を覚えようとするのは愚の骨頂。
よく出るものから順に押さえるのが試験対策の王道です。
よく出る順+関連グループ毎に見ていきましょう。
学生
学生は平成3年3月までは強制加入ではありませんでした。
ですので、任意加入しなければ合算対象期間。
任意加入後に滞納しても合算対象期間。
穴埋め問題の場合はこの「平成3年3月」が必ず登場。
この日付は必ず覚えます。
平成12年からは学生納付特例制度が始まりました。
学生納付特例として承認を受けた期間は後から追納すれば保険料納付済期間となりますが、追納しなくても年金をもらうための期間として認めてもらえます。
ちなみに、この知識は2023春は”年金制度の沿革”のテーマで出題されました。
被用者年金制度加入者の配偶者
サラリーマンたる夫が厚生年金に加入しているからその世帯の年金権は確保されている、したがってその配偶者である妻は年金制度に入る入らないも本人次第。
ということで、強制加入の対象外でした。
ですので、任意加入しなければ合算対象期間。
任意加入後に滞納しても合算対象期間。
余談ですが、当時こういった配偶者の方々は任意加入していた人の方が多かったようです。
在外邦人
以下の2つのことが設問に登場します。
まず、現行制度は以下のとおり。
- 20歳以上65歳未満で任意加入することができる
- 任意加入しなくても合算対象期間
- 任意加入後に滞納した期間も合算対象期間
次に、昭和61年3月までの旧制度では
- 任意加入すら不可能
- 昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの海外居住期間は合算対象期間
昭和36年4月というのは国民年金制度が始まった年なので、それより前の期間は認められません。
また、現行制度では原則65歳に達するまで在外邦人は任意加入できる点に注意。
合算対象期間となるのは20歳以上60歳未満の期間限定です。
外国籍の人
現行制度では、国籍に関係なく強制加入ですが、外国籍の人は加入不可という時代もありました。
そこで、日本国籍取得や永住許可を受ける前の日本在住期間は合算対象期間となります。
また更に踏み込んで、その人が来日する前の昭和36年4月以降の期間も合算対象期間となります。
この来日前の海外在住期間の合算対象期間はよく問われます。
2018秋、2019春、2020春(模擬)、2021春では昭和36年4月以降という点で穴埋めが出ました。
特に、2020秋、2021春は永住許可者に関する穴埋めが出ました。
日本国籍を取得することと永住許可は同列に扱われています。
メモ
条文上、「日本の国籍を取得した者その他政令で定める者」となっていて、別途政令で「永住許可者」が列挙されています。
なぜ集中的にこの論点が出題されるのかは意図がわかりませんが、ここもしっかり押さえます。
脱退手当金の受給
2021春に突如出題された脱退手当金。
続けて2021秋にも同じものが出題されています。
旧法時代の厚生年金の保険料を取り戻す仕組みで、加入期間が短く年金に結びつかない寿退社した女性が利用するケースが多かったようです(うちの母も対象者でしたが、利用せずに年金でもらうことを選びました。さすがはうちの母)。
このお金をもらってしまうと、計算の基礎となった厚生年金の期間はなかったことにされてしまいます(つまり将来の年金に結びつかない)。
そこで、昭和61年4月からの新法施行で脱退手当金は基本的にもらえないこととし、かつてもらったことがある人は、受給資格を満たせるよう、当該期間は合算対象期間として認められています。
合算対象期間として認められる条件としては、昭和61年4月から65歳になるまでに1ヶ月でも保険料納付済期間・免除期間が必要ということ。
上の赤字にした2つが穴埋めで出ました。
特に60歳ではなく、「65歳」ってところが難しいかなと思います(なぜこんな条件が付いているのか私もよくわかりません)。
60歳以上で任意加入して滞納
今までの説明から、”60歳以上”を見た瞬間”これが算入されない期間だ!”となりますね。
60歳以上で任意加入後の滞納は合算対象期間にはなりません。
とにかく、60歳以上ときたらピーンとくるようにしないといけません。
50歳未満の納付猶予期間で追納しない
これも学生納付特例の考え方と同じです。
例え追納しなくても年金をもらうための期間には算入されます。
今回はこれが答えになる!
今後の出題はなく復活もないと予想。
あくまで基礎年金制度が登場した際の経過的なルールですからね。
仮に出題がされるなら・・・、
過去の状況を見ると、表に示したように、よく出る合算対象期間は決まっています。
その中でも特に、学生と日本国籍取得者(永住許可者)、在外邦人は最優先で理解。
あとは、脱退手当金のように予測不能のものが出ないことを祈るのみ。
こればっかりはどうしようもないので、変な予想をするよりも、過去の実績から出題可能性が高いものを潰していきましょう。
それが試験対策の王道です!
シモムー
みんなのねんきん主任講師