出典資料が発表された日:2018年6月26日
どんなニュース?簡単に言うと
地方職員共済組合で年金額計算にミスが生じました。このミスによって日本年金機構の年金にも影響が出ます。一体どのようなミスでどこに原因があるのか、今後どのような影響が及ぶのか発表された資料を引用しながら解説してみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
地方公務員のうち、道府県の職員が入る「地方職員共済組合」で年金支給額にミスが!
(都の職員は「都職員共済組合」、都道府県警察の職員は「警察共済組合」など地方公務員といってもいろいろな共済組合があるんです)
当該組合から「年金の在職支給停止に伴う支給額の誤りについて」という文書が公開されました。
「在職支給停止」とは、年金を受け取りながら社会保険に入る働き方をするとその年金が減額される仕組み(在職老齢年金)のこと。
このミス、地方職員共済組合で完結する話ではなく、なんと日本年金機構や私立学校共済が支給する年金にも影響が出るとのこと。
なんで連帯責任になってるの?
そこで、今回は当該文書を引用しながら何が起きたのかを解説します。
公的年金のなかでも難易度が高い
公務員と民間企業の勤務経験がある人の在職老齢年金
について順を追って見ていきましょう。
公務員と民間企業の年金は別々に受け取る
そもそも、公務員と民間企業の勤務経験があると、もらえる年金はどうなるでしょう。
2015年10月以降に65歳になるAさんはこうなります。
公務員経験が無いBさんと比較するとよくわかると思います。
2人は同じ30年の年金加入期間がありますが、どのような違いがあるでしょう。
- Aさん 公務員10年、民間企業に20年
- Bさん 民間企業にのみ30年勤務
2人ともにもらえる年金は「老齢厚生年金」です。
色を変えていますが、どの分も老齢厚生年金の名称で統一されています。
2015年10月から別々だった公務員の年金と民間企業勤務の年金が厚生年金に統一されました。
名称や仕組みは統一されたのですが、年金支給の実務は従来の組織を活用することに。
ですので、Aさんは同じ名称の老齢厚生年金を2箇所から受け取ります。
Bさんも同じく30年の加入期間がありますが、年金機構からのみの老齢厚生年金となります。
2人は受け取り元が違うだけで、合計すれば30年分の年金であることには変わりはありません。
公務員経験者の在職老齢年金は複雑
老後の年金を受け取りながら社会保険に入る働き方をすると、年金がカットされる仕組みがあります。
それが在職老齢年金。
詳しい仕組みはこちらでまとめたことがあります。
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では、老齢厚生年金を2箇所からもらうAさんの在職老齢年金はどう計算するのでしょうか。
こちらの図解を見てください。
年金機構と共済組合からの年金をあたかも1箇所から受け取っていると考えて、カットされる減額分を計算します。
そのカット額を互いの年金額の比率に応じて按分(あんぶん)するんです。
上の図では年金機構と共済の年金額の比率は2:1。
ですから、計算結果の3万円のカット額を2万円と1万円に按分します。
ということは、年金機構と共済組合はお互いの年金額を正確に把握しないといけません。
すると、今回の地方職員共済のミスが年金機構にも影響する理由がわかりますね。
2015年10月をまたいで在職老齢年金をもらっていた人が被害
影響を受ける人はどの程度いるのでしょうか。
ここで、地方職員共済発表の資料を眺めてみると、
当共済組合及び地方公務員共済組合連合会で当該配慮措置の計算に必要な情報を作成する際において、システム不備又は配慮措置のための情報の入力不備のため、情報が正しく作成されていなかったこと、及び、この誤った情報が日本年金機構及び日本私立学校振興・共済事業団に提供されていたことが原因です。
(注:下線と色つけは筆者)
とあります。
この「配慮措置」というのは制度変更による不利益が大きくならないような措置のこと。
対象者は2015年10月をまたいで在職老齢年金をもらっていた人です。
となると、数は多くはありません。
もう少し具体的にどんな人が対象になるか。
下の図を見てください。
2015年10月に公務員の年金と民間企業勤務の年金が厚生年金に統一されたことは既に説明しました。
統一前は公務員の年金と民間企業勤務の年金の在職によるカットの仕組みは違っていました。
すると、2015年10月前から引き続き在職老齢年金をもらっている人が10月以降になると、ご自身は何も変化が無いのに、急にカット額が大きくなる事態がおきます。
そこで、このカット額があまりに大きくならないような緩和措置が採られたわけです。
どうやら地方職員共済側でシステムに不備があり、この措置がされないまま、過大にカットしてしまったようです。
年金機構側は過払いに
一方、日本年金機構から支給する老齢厚生年金は多く払い過ぎの状態(つまり過少のカットだった)。
となると、地方職員共済は該当者に追加で年金を支給し、年金機構は該当者から返してもらわないといけません。
ちなみに、年金は過払いになると、次の期に支給される年金から自動的に返済してもらう仕組みになっています。
1回で全て返済に回せないのであれば、支給額の半額は残して、次の期に回します。
資料によれば、日本年金機構の件数・金額が一番多くなっています。
今回のニュースまとめ
今回のニュースは公務員と民間企業の勤務経験がある人の在職老齢年金のトラブルでした。
最後に今回のポイントをもう一度振り返りましょう。
- 公務員と民間企業の老齢厚生年金は名称は同じでも別々に受け取る
- 別々に老齢厚生年金を受け取る人の在職老齢年金の計算は合算して考える
- 2015年10月より前から引き続いて在職老齢年金を受給していた人には激変を緩和する措置があった
- 緩和措置が正確に適用されず地方職員共済組合にミスがあり、日本年金機構の年金額計算もやり直しとなった
共済年金と厚生年金が統合されて既に3年になりますが、今になってこのような問題が発覚するとは驚きです。
年金機構側に責任は無いのですが、今回の発表を受けて機構側でもなんらかの発表があるかもしれません(2018年6月27日現在ウェブサイトには何もありません)。
追加で支払うならまだしも、返してもらわないといけない過払いになっていたというのは・・。
統合当初から情報連携がうまくいかなかったりと話を聞いていました。これで終わりならいいのですが・・不安がよぎります。
出典・参考にした情報源
地方職員共済組合 年金の在職支給停止に伴う支給額の誤りについて