どんなニュース?簡単に言うと
2019(平成31)年4月から施行される国民年金の第1号被保険者の産前産後の保険料免除。施行半年前の2018年8月、厚労省より政令と省令の改正が発表されました。これを期にこの保険料免除がどのような仕組みなのか図解も使いながら解説してみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
年金加入中に出産すると保険料が免除される仕組みがあります。
従来は会社勤めで社会保険に入っている人だけの仕組みでしたが、2019年4月からは自営業者や無職の人(国民年金の第1号被保険者)も免除されることになります。
実は法律改正は既にされています。
改正の経緯はこちらでまとめたことがあります。
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2016通常国会 年金改正案提出!年金はこう変わる 現役世代編|みんなのねんきん
出典記事が発表された日:2016年03月11日 どんなニュース?簡単に言うと 2016年1月から開会している通常国会に年金制度改正の法律案が提出されました。その具体的な中身を噛み砕いて説明してみます。 ...
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あとは実際の施行を待つばかり。
施行まで残り半年の2018年8月。
厚労省は法律改正を受けて、より細かい実務的なルールを規定した政令・省令改正の公布を発表しました。
厚労省の日本年金機構宛の通知をもとに、新しい仕組みである自営業者のための保険料免除を解説します。
国民年金法に登場した第88条の2
自営業者の方々の保険料納付を定めた国民年金法は、法律改正によりこんな条文が加わりました(わかりやすくするために一部編集しています)。
第八十八条の二 被保険者は、出産の予定日の属する月の前月から出産予定月の翌々月までの期間に係る保険料は、納付することを要しない。
図解してみましょう。
合計すると4カ月間の保険料を納めなくてよいということになります。
保険料が免除されるが”保険料免除期間”ではない
国民年金の制度には所得が低いとか障害者であると保険料が免除される仕組みがあります。
この免除が認められると”保険料免除期間”という扱いになり、保険料を全額納めない代わりに将来の年金額が低額になります。
年金が減るのを防ぐためには、10年以内に後から納めるしかありません。
これが従来からある国民年金の保険料免除の仕組みです。
ところが、
出産による保険料免除(産前産後保険料免除期間といいます。)は同じ免除という言葉が使われていますが、”保険料免除期間”にはなりません。
保険料を1カ月まるまる納めたという”保険料納付済期間”という扱いになります。
納付済ですから年金額が減ってしまうことはありません。
保険料を全く納めないのに、全額納めたことになっているという点で従来の免除とは異なります。
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政令改正の中身
法律を受けて、より具体的なルールを内閣が決めたのが政令。
2018年8月1日付けで通知された政令の改正内容で私達に関係するのはこんなところです。
- 保険料を前納した後に産前産後保険料免除期間があるとその期間の保険料を還付する
- 確定拠出年金において産前産後保険料免除期間中でも掛金を納められる
- 外国人の脱退一時金を請求した場合の金額を決める基準となる月に産前産後保険料免除期間も含める
1は産前産後保険料免除期間が保険料納付済期間になるので返しますという規定。
2は確定拠出年金において、保険料免除の期間は掛金を納められなくなるのですが、産前産後免除期間なら大丈夫という規定。
3は外国人が帰国した際に掛けた保険料を取り戻す仕組みで、言葉の整理をした規定。
私たちに直接関係があるのは、1と2くらいでしょうか。
省令改正の中身
法律・政令を受けて、実務的な具体的ルールを定めたのが省令。
2018年8月8日付けで通知された省令の改正内容は何を届けるのかが新たに記載されています。
当然のことながら、本人側が出産するって言わないと行政もわからないですよね。
中身を見てみましょう(わかりやすくするため一部編集しています)。
第73条の7 第1号被保険者は、次に掲げる事項を記載した届書を市町村長に提出しなければならない。
一 氏名、生年月日及び住所
二 出産の予定日(出産後に届出を行う場合にあつては、出産の日。次項第一号において同じ。)
三 単胎妊娠又は多胎妊娠の別
四 個人番号又は基礎年金番号2 前項の届書には、次に掲げる書類を添えなければならない。
一 出産の予定日を明らかにすることができる書類
二 多胎妊娠の場合にあつては、その旨を明らかにすることができる書類
三 出産後に前項の規定による届出を行う場合にあつては、当該第一号被保険者と当該出産に係る子との身分関係を明らかにすることができる書類
四 前項の規定により同項の届書に基礎年金番号を記載する者にあつては、国民年金手帳その他の基礎年金番号を明らかにすることができる書類3 第一項の規定による届出は、出産の予定日の六月前から行うことができる
本人の届出は出産後にすることもできますが、第3項にあるとおり、出産予定日の6カ月前からすることもできます。
仮に出産予定日がズレて月をまたいでしまっても、改めて届出する必要はありません。
結局4カ月分が免除されれば結果は同じですから。
ちなみに、
規定の中に「多胎妊娠」という言葉がありますが、これは双子以上の場合ですね。
この場合は、出産予定月の前月からの保険料免除ではなく、「3カ月前」からの保険料免除となります。
ということは、合計で6カ月分の保険料免除となります。
そのために多胎妊娠の区別を行政に届けるわけです。
今回のニュースまとめ
今回は国民年金の第1号被保険者のための産前産後保険料免除について見ていきました。
ポイントは次のとおり。
- 出産(予定)日の前月から翌々月までの4カ月間の保険料が免除される(単胎妊娠の場合)
- 免除された期間は保険料免除期間にあらず。保険料納付済期間となる
- 政令と省令の改正あり。6カ月前から届出可能
産前産後保険料免除期間。
今回、記事のために改めて調べてみるといろいろなことがわかりました。
一番なるほどなぁって思ったのは、
免除は免除でも”納付する義務が免除される”
ということ。
そんなわけで、第88条の2の規定は保険料免除を定めた第90条の次ではなく、納付義務を定めた第88条の次に定めているんだなと理解した次第。
年金は奥が深いです。
シモムー
みんなのねんきん主任講師