なんと!来年から25から10になるってほんと?|みんなのねんきん

25

シモムー

みんなのねんきん主任講師

どんな事例?簡単に言うと・・

2016年7月11日。安倍首相が年金を受け取るための最低期間を2017年度から10年に短縮すると言い出しました。従来は25年。消費税増税が前提だったはずなんですが・・。今回は年金を受け取るための資格期間を解説してみます。

スポンサーリンク

こんな事例を考えてみましょう

Cさんは高齢者といわれる年齢。

ところが年金を受け取っていません。

年金制度に加入して保険料を納めた期間は10年しかありません。

これまでほとんどの期間、滞納してきたからです。

一方、

Cさんの幼なじみのHさん。

年金制度に加入して保険料を納めた期間は10年しかありません。

これまで海外生活が長く、日本の年金に自分の意思で加入したのですが、すぐに滞納してしまいました。

滞納期間はCさんとほとんど同じです。

ところが、

HさんはCさんには黙っているのですが、実は10年分の年金を受け取っています。

ある日、年金を受け取るための期間が10年に短縮されるとの報道を見ていた2人。

H:「これでCも年金がもらえるようになるな」

C:「ん?今『Cも』って言った?まるでHは既にもらっているみたいだな」

H:「え?そ、そんなわけないだろ、俺たち10年しか払ってないんだし」

しかし、Hさんの目が辞任目前の猪瀬元都知事のように焦点が定まっていないのをCさんは見逃しませんでした。

今回の事例の何が問題なんでしょうか

老後の年金を受け取るためには原則として25年以上保険料を納めることが必要です。

年金をもらう資格が生じる最低必要期間ということで「受給資格期間」と呼びます。

この受給資格期間。

消費税が10%になることを前提にして25年が「10年」になることが決まっています。

消費増税は延期されましたので、10年に短縮するのも先と思っていた矢先・・。

2016年7月11日。

安倍首相が2017年度から開始するよう準備を指示したとのこと。

そこで今回は老後の年金を受け取るための最低必要期間、「受給資格期間」について取り上げます。

CさんとHさんの何が違うんでしょうか。

保険料を納めた期間でもない、免除の期間でもない、第3の期間が問題となります。

ちなみに、Hさんの焦点の定まらない目は問題とはなりません。

解説してみましょう

老後の年金に共通の受給資格期間

老後の年金と一口に言っても国民年金制度の老齢基礎年金、厚生年金制度の老齢厚生年金があります。

更に厚生年金は60歳台前半後半以降の年金に制度が分かれます。

これらの年金は全て共通して「受給資格期間」を満たしていないといけません

保険料を納めた期間が25年以上必要。

この25年の中には保険料を免除してもらった期間も含めます。

逆に言うと、何ら手続きを取らなった滞納期間は25年の期間として評価してくれません。

受給資格期間を満たして初めて基礎ができあがるので老齢基礎年金を受け取れます。

その基礎に上乗せして厚生年金の加入期間があれば、老齢厚生年金も受け取れます。

カラ期間を加えて25年に達すればOK

25年にどうしても足りない人はどうしたら良いでしょうか。

例えば、今はサラリーマンの専業主婦は国民年金に強制加入することになっていますが、昔はそうではありませんでした。

昭和61年3月以前の旧年金制度では強制ではない人たちが結構いたんです。

サラリーマンの専業主婦は「加入は自分の意思でどうぞ」でした。

海外居住者であれば、「加入はできません」という人たちでした(現行制度では「自分の意思でどうぞ」)。

昭和61年4月からの現行制度では多くの人たちを強制加入にして25年を要求するようになりました。

すると、

25年に足りない人たちをどうするかが問題となります。

そこで登場したのが通称「カラ期間」と呼ばれるものです。

上の強制加入ではない人たちの期間を25年に加えて良しとしたんです。

ただし、

実際に保険料を納めていないわけですから年金額には反映しません

だからカラっぽの期間なわけです。

 

自分の意思で入ったけど滞納したでもOK

Hさんは海外にいた期間、Cさんと同じく保険料を滞納しています。

にもかかわらず年金の権利が生じています。

実は平成26年4月からカラ期間の扱いが変更したことでHさんは得することとなりました。

以前は、

自分の意思で加入したのに滞納したのであれば、その期間は単なる滞納期間である」

とされていたんです。

とすれば、

年金に対する意識が低い人がカラ期間として救済され、滞納したとはいえ、年金に対する意識が高い人が救済されないことになる。

そこで、自分の意思で加入してその後に滞納してもその期間はカラ期間にすると改められました。

逆に、

Cさんは日本国内で強制加入期間中に滞納しています。

義務を果たさなかったCさん。

義務ではなかったけどがんばろうとしたHさん。

二人の意識の違いが明暗を分けました。

(ま、Hさんはがんばろうとしなくてもカラ期間にはなりますけど。)

(ちなみに、ここで取り上げた海外在住期間のカラ期間は典型例で、他にも様々なカラ期間が用意されています。)

無年金者の4割が10年以上25年未満

こんなふうに25年に足りなくても、制度が原因の未加入期間は年金に結びつくよう考えてくれています。

つまり、

25年に足りないのはカラ期間もなく、滞納期間が長いという人たち。

そして登場したのが10年への期間短縮。

期間短縮で実際にどれほどの人が恩恵を受けるんでしょうか。

厚労省の資料を引用します。

bunpu

(タップで拡大)

65歳以上の無年金者のうち、10年以上25年未満の人たちは40%

全体約42万人のうち、16.8万人が新たに対象になります。

こうした人たちを救済しようというのが改正の趣旨になります。

Cさんも最低10年以上納付実績があるなら対象になりますね。

今回の事例まとめ

今回の事例をまとめてみましょう。

  • 受給資格期間を満たして初めて老後の年金を受け取れる
  • 25年に足りなくてもカラ期間が救済のカギとなる
  • 自分の意思で加入して滞納してもカラ期間扱い
  • 10年への期間短縮で17万人が救済される

増税が前提だった10年への期間短縮。

財源をどうするんでしょうか。

必要な費用は300億円。

私は無理に急いでやる必要はないんじゃないかと思います。

確かに25年という期間は他の国と比較しても長い。

ただ、年金は若いうちから老後に備えるものという性格を考えれば決して長くはないと思います。

コツコツ準備をしてから老後に受け取るからこそ、ありがたい。

短期間で受け取れるなら、ありがたみも何もない。

実際に10年だけ納めて、あとは納めないというモラルハザードが生じるのではないかと心配する声も上がっています。

また、10年だけでは少なすぎて老後の生活なんか送れません。

年間20万円程度ですから。

とすれば、

財源を無理に作って急いでやる必要なんかないと思いますけどね。

それよりも喫緊の課題である人口を増やす政策に力を入れるべきだと思うんですが・・・。

日本死ねと言われても仕方ありません。

2016年7月21日追記

当初の公表では新たに年金の権利が生じる人は約17万人とのことでしたが、7月15日に追加で公表された報道によると、高齢化の進展によって60万人超に膨らみそうだとのことです。

記事内でも約17万人の数字をご紹介しましたが、平成19年の調査結果が当初の公表で利用された模様。

費用も650億円まで膨らむとのことです。

ますます財源を作ってまでやる必要があるのか疑問に思いますね。


事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。



最後までコラムをお読みいただきありがとうございました

今後もみんなのねんきん公式ブログでは公的年金の役立つ情報を発信し続けます。

コラムを更新しましたら、メルマガでお届けしたいのですが、送信の許可をいただけないでしょうか?

みんなのねんきん創業者のシモムー本人が、更新したコラムについて、軽快かつ熱く年金を語ります。

読者に役立つ新サービスの開始やイベントの告知もメルマガでいち早くお知らせ。

メールを受け取っても良いよという方は以下のリンクをクリックお願いいたします。

メールの送信登録はこちら

もちろん費用はかかりません。要らなくなったらメールの上部にあるURLをクリックするだけ。

気軽に登録してみてください。
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
アバター画像

シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。