消費増税延期!増税をアテにしていた社会保障の中身知ってます?|みんなのねんきん

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出典記事が発表された日:2016年6月1日

シモムー

みんなのねんきん主任講師

どんなニュース?簡単に言うと

2016年6月1日。安倍首相が10%への消費増税の延期を表明しました。税金が増えないのは嬉しいのですが、一方で増税をアテにしていた社会保障も延期となります。そもそも増税で何をしようとしていたのかシモムーが解説してみます。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

消費税8%が10%に増税される措置が延期となりました。

「増税されなくて良かった」という声があるのは当然。

ですが、

「増税と一体して行われる社会保障の充実が遅れる」

「将来世代へ負担を先送りにするな」

という声も聞こえます。

そもそも、

増税をアテにした社会保障の具体的中身はどんなでしょうか?

疑問に思ったので調べてみました。

育児支援はたったの13分の1

参照した新聞記事(日本経済新聞)によると、10%への引き上げで1.3兆円分を社会保障の充実策に使うとのこと。

内訳は以下のとおり。

  1. 低年金者に年6万円を給付 5600億円
  2. 公的年金の受給に必要な資格期間を短縮 300億円
  3. 低所得者の介護保険料のさらなる軽減や国保への財政支援の追加 5000億円
  4. 50万人分の保育の受け皿を確保 1000億円

ちょ、こ、これは・・ほとんどが高齢者向けの施策。

4の育児支援は全体の13分の1しかありません。

偏り過ぎているんじゃないでしょうか。

う〜む。

私としては年金に関係のある1・2が気になるところ。

中身を調べてみました。

月額5000円×12=6万円を年金とは別に支給

国民年金の老後の年金の仕組みに似ている

1の低年金者に年額6万円を支給するというのはこんな仕組みです。

厚労省の資料を見てましょう。

平成27年10月 年金生活者支援給付金

(出典:厚労省資料 クリックで拡大)

 

まず、施行日が平成27年10月1日となっていますが、消費増税が延期されましたのでまだ施行はされていません。

法律ができた時の資料ですのでご理解ください。

で、具体的にいくらもらえるか。

満額(40年)に対する保険料を納めてきた月数の割合に応じて金額が決まる仕組みです。

もらえる月額 = 5000円 × 納めた月数 / 480(40年)

例えば、

20歳から60歳になる前までの間に会社勤めを15年、その後自営業を20年経験して保険料を納めてきたとしましょう。

4,375円(月額) = 5000円 × 420月(35年) / 480

となります。

みんな一律年間6万円(月額5000円)というわけではないです。

もちろん、「低年金者」という条件付きですので年金を含めた収入が多い人は対象外です。

 

障害者は母子家庭・父子家庭にも支給

なんと、

高齢者だけではなく、国民年金制度からの障害年金・遺族年金を受け取る人も対象になります。

ということは、障害をお持ちの方と母子家庭・父子家庭が対象。

金額は自分が保険料を納めてきた期間に関係なく、月額5000円(障害等級1級だと1.25倍)です。

条件に合わない人にも補足的給付金がもらえる

上に示した保険料納付実績に基づいた給付金がもらえない人でも、補足的給付金という仕組みまで用意されています。

年金以外の収入が全くない人の方が給付金+年金で高額になることを防ぐ措置だと思います。

最後に、

これらの給付金は2カ月に1回、公的年金と同じように支給され、その仕事は日本年金機構がするそうです。

ますます年金機構は忙しくなります。

25年必要な年金加入期間が10年に短縮される

現行の公的年金制度は全体の加入歴が25年以上ないと年金を受け取れないことになっています。

これは、国民年金・厚生年金共通の条件です。

この25年というのは自分が保険料を納めた期間だけでなく、免除を受けた期間も含めます。

滞納さえしていなければ25年の期間として評価してもらえます。

で、これが10年に短縮されるということです。

これは無年金者対策であり、コツコツきちんと納めてきた人には全く関係ないですね。

このための費用は300億円。

支援給付金に要する費用のたった5%程度です。意外に少ない。

増税を待たずに政党助成金(年間317億円)でもヤメればいますぐ実施できそうなものですけどね。

延期じゃなくて白紙にして検討し直すのはどうか?

さて、ここまで中身を見ていくと疑問に思います。

「あまりに高齢者向けに偏り過ぎている」

年金額が少ないというのであれば、満額自体を改正して引き上げるのがスジでしょう。

(現在、国民年金制度の老後の年金は約78万円)

また、資格期間25年というのは年金制度ができた時から決まっています。

若い時から準備をして、老後に受け取るのが年金であり、期間が足りないから後から救済するというのは納得がいきません。

今やるべきことは人口が減り始めた危機的な状況に対する育児支援だと思います。

現役世代の我々からすれば納得がいかないです。

今回のニュースまとめ

今回のニュースのポイントは

  1. 消費税2%増税の中身はほとんどが高齢者向け
  2. 支援給付金は5000円をベースにこれまで納めた保険料の期間で決まる
  3. 年金を受け取るための25年10年に短縮される

という点でした。

さきほど、「年金額が少ないというのであれば、満額自体を改正して引き上げるのがスジでしょう。」と書きましたがそれができないのはわかっています。

満額自体を引き上げたら保険料を引き上げるのは当然のこと、制度自体を根本的に変えないといけないからです。

だから、税金を財源にして年金とは別の形で給付金という形にするしかない。

しかし、

だからといって、そこまでしてやらなきゃいけない給付金なんでしょうか。

社会保障の費用がますます足りないって、そりゃあ配る金額を増やせば足りなくなるに決まっています。

現役世代も納得ができる社会保障にしてもらいたいです。

出典・参考にした情報源

一体改革かすむ道筋 社会保障充実、安定財源が急務  :日本経済新聞



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シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。