どんなニュース?簡単に言うと
「年金決定通知書・支給額変更通知書」通称、「額変(ガクヘン)」。年金額が改定された時に送られる通知です。この通知がどういう理由で、どんなタイミングで発行されるのか、そして毎月送られる典型的な事例とは・・。解説してみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
毎年年明けから確定申告の時期に掛けて年金行政は多忙を極めます。
それは税金に関する通知発送事務が膨大になるわけですが、もちろん普段送る通知もいつもどおり送らないといけません。
普段の通知は例えば、以前ご紹介したことがある振込通知書・改定通知書があります。
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振込通知書は文字通り振込金額に変更があったときに送る通知。
改定通知書は、物価や賃金の変動で6月に送るので、それ以外の時期は再発行の依頼に基いてお送りする場合だけです。
今回は、これらとは異なり、年金額が改定された場合にお送りする「年金決定通知書・支給額変更通知書」を取り上げます。
同じ「改定」でも改定通知書とは異なり、ご自身の事情で年金額が改定する場合の通知です。
例えば、年金をもらいながら働いていて、その後に退職すると、在職中の加入期間を加えて再計算しなおします。
こういった「改定」のときにお送りする通知です。
通称、業界用語で「額変(ガクヘン)」とよんでいる通知書を解説しましょう。
以下、略称で解説を進めます。
(今回は、年金初心者の方には難しい内容になっています。ご容赦ください)
額変の見た目はこんな感じ
額変は日本年金機構のホームページにフォームや記載内容の説明があります。
パッと見はこんな感じです。
額変はハガキサイズではなく、封筒に入って届きます。
日本年金機構のウェブサイトでこの通知書の見方が出ています。
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国民年金・厚生年金保険 年金決定通知書・支給額変更通知書の見方
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このリンクの資料だけでも表面上のことは分かります。
ですが、もう少し具体的に、年金機構で事務が処理される以下の観点から解説してみます。
- 額変が発行されるタイミング
- 額変が発行される理由
- 額変発行の具体例
額変が発行されるタイミングとは
額変はその名称が「年金決定通知書・支給額変更通知書」ですので、以下のように2通りの用途で発行します。
つまり、前者(年金決定通知書)の意味での通知と後者(支給額変更通知書)の意味での通知という2通りです。
「年金決定通知書」としての発行タイミング
60歳台前半は特別支給の老齢厚生年金を受給中。
65歳に達したのでその老齢厚生年金が終わり、65歳からの本来支給の老齢厚生年金、老齢基礎年金を決定する。
その時が額変発行のタイミングです。
新たに年金が生じるので新しく年金証書が発行されそうなものですが、そうではありません。
このときには新しく年金証書は発行されず、この額変でお知らせすることになります。
メモ
年金を全く新しく初めてもらう場合の年金決定時は、年金証書と一体になった年金決定通知書のため、いわゆるここでいう「額変」ではありません。
「支給額変更通知書」としての発行タイミング
「支給額変更通知書」としての通知は年金の決定後に、制度や法律により年金額が変更となった際に、その理由と変更後の年金額を通知するものです。
4月の年金額改定は、ハガキ形式での「改定通知書」で通知しますので、この通知書ではありません。
また、年金の請求が遅れて過去に遡って決定される場合に4月の改定があるなら、この通知に記載されます。
年金額の変更通知としての発行タイミングって実は多いんです。
発行理由は年金額が変更となる制度の数だけあります。
よくある理由は
- 在職老齢年金による支給停止、支給停止額変更、支給停止解除、退職改定
- 加給年金の加算、加算停止、加算消滅
- 振替加算開始、加算停止、加算消滅
- 雇用保険との調整による支給停止、一部停止、支給停止解除
- 障害年金の等級変更による額の改定、下位等級該当による支給停止
- 遺族年金の額の改定
上記の事由に該当する方の中でも、特に、在職老齢年金や雇用保険との調整がある方には頻繁に発行されます。
上記に該当しない受給者には、発行されることはありません。
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額変発行の具体例
以上のとおり、年金額が受給者の何らかの事情で変更される場合に額変は送られます。
職業生活をリタイアした一般的な年金受給者はこの額変が送られることはほとんどないはず。
ところが、
額変が頻繁に発行される興味深い事例がありますので、その典型例をご紹介しましょう。
例えば、
支給額変更通知書として毎月届く方の例を見てみます。
【事例】
年金を受け取りながら働いていたAさん。仕事を辞めて20XX年3月10日に失業給付を受け取る手続きをとりました(現在63歳)。
ところが、その後事情がありハローワークに行くのをやめてしまいました。
せっかく雇用保険の失業給付の手続きを取ったのに、その後の失業給付をもらわなかった場合は、年金を3ヶ月後に毎月受け取る変則的な形になります。
その3ヶ月後の年金を受け取る月(事例では7月)から毎月、この通知が送付されるんです。
メモ
60歳台前半で老齢厚生年金と失業給付は両方もらうことができません。失業給付の手続きを取ると、有無を言わさず手続きを取った月の翌月分の年金が全額停止となります。ただ、手続きを取ったものの、実際には失業給付をもらわなかった月は年金の停止が解除されます。
メモ
失業給付を受け取っていないという連絡がハローワークから年金機構に届きますが、1回の連絡が4週間28日分しかないため、2回の連絡を待ってようやく1カ月間もらっていないことがわかります。そのため3ヶ月後に停止解除という事情があります。
その通知理由には以下のように記載されます
項番/決定・変更年月/決定・変更理由
01/平成XX年4月/雇用保険受給による支給の停止を解除しました
02/平成XX年5月/雇用保険受給のため年金を停止しました
具体的に額変には以下の欄に記載されます。
項番01の意味
停止を解除した = 年金あげます という意味になります。
つまり、平成XX年の4月分、1カ月分の年金をあげますとなります。
ハローワークで手続きを取ったのは3月。
その翌月分4月は失業給付をもらっていないので「4月分のみあげます」となります。
項番02の意味
額変を送った時には年金機構は「4月分」の年金が払えることがわかりました。
(ハローワークからの情報提供で4月は1日も失業給付をもらっていないことが判明したから)
しかし、5月分はまだ不明です。
(ハローワークからの情報が揃っていないから)
そのため、5月からは再び年金を止める処理をしたのです。
年金受給者からすればわけがわからない
このように記載された通知書が、変更月を1カ月ずつずらした形で、毎月届くのです。
Aさんが引き続きハローワークに行かない状況が続くなら、
次の額変の内容は、
- 01/5月分を停止解除=年金あげる
- 02/6月分停止=年金あげない
となります。
いつまでこんなことが続くのか。
その受給者の失業給付の受給満了日(離職日から1年後)の約2か月後まで続きます。
これでは年金受給者にとっては、わけがわかりません。
ご自身は失業給付をもらっていないのに、「支給停止」になるのが意味が不明。
例え意味がわかったとしても、
私がよく言われた受給者からのお叱りです。
この支給額変更通知書は、年金額の変更がシステムとして記録され、その内容にそって、自動的に発行される仕組みになっていることから、個別対応は出来ない仕様なんです。
ハローワークに行ったのに失業給付をもらわない場合の時系列まとめ
この事例の年金停止処理の全体像をまとめると、以下のような流れです。
ハローワーク | 年金機構 | |
3月 | Aさんの失業給付の手続き完了!年金機構さんよろしく! | 了解!4月分から年金を止めるから! |
4月 | Aさん失業給付もらわない | |
5月 | Aさん失業給付もらわない | |
6月 | Aさん失業給付もらわない | (6月下旬)4月の失業給付をもらった情報がないから、来月4月分だけ年金をあげよう!このことを来月Aさんに額変で教えてあげよう! |
7月 | Aさん失業給付もらわない | (7月初め)4月分だけあげる内容の額変発送! (7月15日)4月分だけ振込!5月分はまだわからないので1カ月分だけ! (7月下旬)え?5月ももらってないの?じゃ、来月に5月分だけ年金あげよう!このことを来月Aさんに額変で教えてあげよう! |
8月 | Aさん失業給付もらわない | (8月初め)5月分だけあげる内容の額変発送! (8月15日)5月分だけ振込!6月分はまだわからないので1カ月分だけ! (8月下旬)え?6月ももらってないの?じゃ、来月に6月分だけ年金あげよう!このことを来月Aさんに額変で教えてあげよう! |
この繰り返しとなります。
「内容がわからんと言われようが、無駄だと言われようが」、発行されたものはお送りする、そうするしかないのが現状です。
支給額が変更した場合、変更理由が記載されますが、最近では、文言の見直しなどがあり、ある程度平易な文になっています。
ただ、それでも、制度を認識していない受給者やその家族にとっては、分かりにくい通知書になっていることは確かです。
今回のニュースまとめ
今回は、「年金決定通知書・支給額変更通知書」(通称、ガクヘン)について、発行されるタイミング
、発行される理由、毎月発行されてしまう具体例を解説しました。
ポイントは次のとおり。
- 「年金決定通知書」として送られるのは65歳時の年金切り替えの際に通知するもの
- 「支給額変更通知書」としての通知は年金の決定後に、制度や法律により年金額が変更となった際に、その理由と変更後の年金額を通知するもの
- 額変は在職老齢年金や加給年金、雇用保険との調整の場面で送られる
- 失業給付の手続きを取ってから、ハローワークにいかなくなると、毎月額変が届く変則状態となってしまう
他にも注意すべきポイントは、
- 額変に記載される金額は年額です。支給は月数分なので、実際に支給する額が記載されることはありません。
- 実際に支給される額は振込通知書でお知らせするのです。
このように発行される通知が受給者にとってはストレスになるでしょうね。
相談を受ける側が、きちっと説明できないと、そのストレスを増長させてしまうのは言うまでもありませんね。
出典・参考にした情報源
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国民年金・厚生年金保険 年金決定通知書・支給額変更通知書の見方
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シモムー
みんなのねんきん主任講師