どんな事例?簡単に言うと・・
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」。2020年6月は私のもとにいつもと違う定期便が届きました。今回は節目年齢で届いた「ねんきん定期便」を題材にその中身の検証をしてみます。今回は全3回(前編・中編・後編)のうちの前編。そもそも定期便が送られるようになった背景事情、現在の記録問題対応の進捗、定期便のフォーマットの違いをまとめました。
スポンサーリンク
こんな事例を考えてみましょう
毎年届く「ねんきん定期便(以下、「定期便」)」ですが、節目年齢では特別な定期便が届きます。
この特別な定期便、35歳、45歳、59歳時に届きます。
_| ̄|○ ガクッ
実は定期便が届いたのは1年前の2020年だったのですが、心の整理をしてコラムにするまでに1年かかってしまいました。
今回はこの45歳時に届いた定期便にまつわる私の事例を紹介します。
今回の事例の何が問題なんでしょうか
節目年齢で届く定期便は情報量が多く、どこに注意して読むべきか、ハガキの定期便と何が違うのか、一般の方にはわからないものです。
前編では、実際に届いた私の定期便の中身を見る前に、定期便送付の理由、年金記録問題の現状など、中身以外を考えてみます。
解説してみましょう
そもそも何のために送られてくるのか?
もう10年以上前になります。
平成19年に5000万件の宙に浮いた年金記録が問題になりました。
個人を特定できない記録が膨大なため、私たちに年金記録が正しいかどうかを確認してもらうために送られたのがこの通知です。
当初は「ねんきん特別便」という名称で始まったのですが、今は毎年誕生月に送る「定期」便として現在に至ります。
メモ
正確には誕生日に達した日の属する月に送られるので、1日生まれの人は誕生月の前月に送られます。
年金機構のサイトによれば、
「ねんきん定期便」は、保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報をわかりやすい形でお知らせし、年金制度に加入していることや年金給付と保険料負担の関係を実感いただき、現役世代、特に若い世代の方に年金制度に対する理解を深めていただくことにより、国民の年金制度に対する信頼を向上させることを目的としてお送りしているものです。
(出典:日本年金機構ウェブサイト 「年金Q&A(ねんきん定期便)」)
記録を確認して欲しい!という意味合いで送付を始めた定期便ですが、現在は年金制度に理解を深めてもらって、制度への信頼向上の狙いもあるようです。
節目が35歳、45歳、59歳の理由は?
3つの節目年齢はどこから来ているのでしょうか。
20歳から国民年金に入り、15年経過したときが35歳。
60歳まで残り25年。
かつては、老後の年金をもらうためには25年の保険料納付実績(免除期間も含む)が必要だったわけで、残り25年のタイミングで
という注意喚起の意味合いがあるはずです。
メモ
平成29年8月から老後の年金をもらうための受給資格期間が10年に短縮されています。
59歳の節目はかつては60歳から受け取ることができた厚生年金制度からの老後の年金を意識しています。
という意味合いです。
メモ
かつては58歳時に通知を送っていたのですが、年金記録問題を契機に記録整備の環境が整ったため、直前の59歳に送るので大丈夫となりました。
ということで、45歳の節目というのは、60歳まで残り15年。
ということでしょう。
_| ̄|○ ガクッ
メモ
定期便に言われるとおり、最近は右肩が上がらなくなり、近いものの焦点が合わせづらくなりました・・。
5000万件は今はどうなった?
ふと、思いました。
年金機構のサイトによれば、2020年(令和2年)9月現在、5,095万件のうち、解明した記録は3,290万件。
問題発覚から10年以上経った今も未解明の記録は、約1800万件もあります。
その内訳をじっくり見てみると本人が確認さえすれば解明できそうなものも結構含まれています。
-
年金記録問題に関する取り組み
続きを見る
実は、記録問題発生直後に送付した「ねんきん特別便」は名前などが一緒だけど別々になっている記録を抽出して(「名寄せ」という)、本人に確認してもらう趣旨で送っています。
しかし、本人から連絡が無い記録が230万件もあります(そもそも特別便が届かなったものを含めると271万件)。
最大の手がかりである名前がわかっているわけですから、なんとか本人に確認してもらいたいところ。
そんなわけで、今でも定期便で記録に誤りがないか年金機構はお願いを続けているわけです。
しかしまぁ、この他に手がかりが全くないものが「841万件」もあるので、この問題の解決は難航しています。
スポンサーリンク
どんなケースで記録漏れが起きていたか?
具体的にどういう人が記録漏れの対象になってしまうのか?その典型的なパターンがあるはず。
年金機構のサイトによれば、
「退職後、結婚し姓が変わった」、「いろいろな名前の読み方がある」、「転職のたびに年金手帳が発行された」に該当する事例が全体の約9割を占めています。
(出典:日本年金機構ウェブサイト「年金記録問題とは?」)
-
年金記録問題とは?
続きを見る
この3つのどれかに当てはまる方であれば、定期便の加入履歴はしっかり見ておく必要があります。
ちなみに私は
- 姓は変わっていない
- シモムーと本名の2種類の読み方がある
- 手帳は1冊しかない
ということを前提に精査したところ、私の加入履歴に問題はありませんでした。
いつものハガキの定期便と何が違うのか?
さて、
節目年齢に届く定期便とそれ以外に届く定期便とでは何が違うのでしょうか。
対比してみました。
節目年齢(35歳・45歳・59歳) | 節目年齢以外 | |
形式 | A4用紙 封書 | はがき |
加入記録 | これまでの全加入記録 | 直近1年間の加入記録 |
年金見込額 | 50歳以上:現状が60歳まで続いたと仮定した年金額 50歳未満:今もらうと仮定して計算した年金額 |
大きな違いは加入記録の情報量。
定期便発送のもともとの趣旨は記録の確認ですから、節目の年齢でこれまでの全加入記録を確認してもらうことにあります。
2021年度は昨年とどう違うのか?
定期便に限らず、年金機構からの通知類は毎年度なんらかの見直しがされています。
そこで、
2021年度の定期便(35歳・45歳版)は2020年度ととどこが違うか、ここが違うという点を対比してみました。
まずは2021年度版です。
そしてこちらが2020年度版
ほとんど変化はありませんが、以下の2つが違うところです。
- 昨年の加入実績による年金額の棒グラフに昨年の金額が掲載されるようになった
- 令和4年4月から75歳受給開始を選択できる旨の文言が入った
1は昨年との金額の比較で、年金額が確実に増えている実感が得られるはず。
2は繰下げて受給する仕組みが2022年(令和4年)から改正されることに伴う表現。
現行の70歳上限から75歳上限になります。
ということは、2022年度の定期便のフォーマットは更に変更されることが予想されます。
ちなみに、
数年前から定期便には「繰下げするとこんな良いことが!」と言わんばかりの上の図が登場するようになりました。
繰下げする人が増えれば、年金財政にも好影響を与えるとのことなので、周知の一環として定期便に載せているわけですが、どの程度の効果が生じているやら・・。現在繰下げ受給している人は全体の数%です。
繰下げと年金財政の関係については、昔、財政検証のコラムをまとめたことがあるので参考にしてください。
-
7分でわかる!2019年公的年金財政検証 検証結果編|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2019年8月。5年に一度の年金の財政検証結果が発表されました。年金制度の今後の見通しはどうだったのでしょう。実際に社会保障審議会に足を運び、いただいた資料をもとにコンパ ...
続きを見る
今回の事例まとめ
今回は私に届いた45歳節目年齢のねんきん定期便を解説してみました。
ポイントは以下のとおり。
- 定期便は年金記録問題に端を発し、各自で年金記録を確認してもらうことを趣旨に送付されるようになった
- 約5000万件の宙に浮いた記録のうち、未だ1800万件が未解明のまま
- 節目年齢の定期便とそれ以外の定期便は年金加入記録の情報量に差がある
- 2021年度と2020年度では繰下げを周知するためのイメージ図に多少の変更あり
1年間ほったらかしにしていた、45歳の節目に届いた定期便。
意を決して中身を見てみたら、いろいろなことがわかったのは収穫です。
特に、年金記録問題は10年以上たった今も、未だ全体の3分の1が未解明というのはショック。
この問題の完全解決は難しいと思います。
平成19年は私が年金コールセンターで働き始めたタイミングで、まさに戦場のような日々だったことを思い出します。
さて、
次回の中編はいよいよ中身の検証に入ります。
45歳の私が今、玉手箱を開けた場合に、一体いくらもらえるのか?
老後の年金編ということで、数字の検証と今できる対策を考えてみます。
お楽しみに。
出典・参考にした情報源
日本年金機構ウェブサイト:
-
年金記録問題に関する取り組み
続きを見る
-
年金記録問題とは?
続きを見る
シモムー
みんなのねんきん主任講師