どんな事例?簡単に言うと・・
既に納めた国民年金保険料が戻ってくる場合があります。この払戻金(還付金)に関して、実際の請求用紙が手に入ったので、還付される事例、手続きの注意をまとめてみました。
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こんな事例を考えてみましょう
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社長のAさんは結局社会保険に入りました。
それに伴ってAさんの奥さんのBさんが扶養に入ることになったんです。
今回の事例の何が問題なんでしょうか
国民年金の保険料は毎月納めるのが原則ですが、納めすぎた場合は返金されます。
どういう場合に返金がされるのか。
どんな手続が必要なのか。
手続書類を手に入れるにはどうしたら良いのか。
実際の手続書類を参考にしながらそれらの問題に答えていきます。
解説してみましょう
シモムーです。
今回は私が実際に見聞きしたBさんの事例をもとに解説してみます。
国民年金の保険料が返金される場合とは
前納+年金の立場変更が原因
国民年金の保険料は前もってまとめて納めることができます。
これが「前納」というもの。
納めすぎの典型例はこの前納が絡んでいます。
前納したあとに年金上の立場が変わると納めすぎ状態になります。
この場合に、年金機構は返金することになります。
ここで、年金上の立場は以下の3つあります。
- 社会保険に入るサラリーマン・公務員 第2号被保険者
- 「1」に扶養される配偶者 第3号被保険者
- 「1」「2」以外の人 第1号被保険者
Bさんは国民年金の第1号被保険者でした。
その後夫のAさんが社会保険に入り第2号被保険者になったことで、扶養されている配偶者のBさんは第3号被保険者に変わりました。
Aさんは2018年8月1日付で社会保険に入ったので、Bさんも8月1日付で第3号被保険者になっています。
Bさんは既に2018年4月分から2019年3月分までの1年分を前納していたため、8月分以降は払い過ぎとなったわけです。
Bさんの通知には確かに8月からの過誤納(かごのう)となっています。
月の途中や月末で立場が変更すると?
今回のBさんは8月1日付で年金の立場が変更したのでわかりやすいですが、これが15日や31日だったらどうなるでしょう。
日割り計算ということになるのでしょうか。
年金の加入歴は全て月単位なので日割りにはなりません。
1カ月のうち、どこで立場が変更しても、”その月”から立場が変わります。
8月15日だろうが、8月31日だろうが、8月からは第3号被保険者なので、8月分以降は払い過ぎであることに変わりません。
いくら返ってくるのか?その内訳は?
通知書の還付金額の欄を見ると「132,400円」となっています。
これは8カ月分の納め過ぎの合計額です。
Bさんはこの内訳はどうなっているのかが気になっていました。
実はこの通知書には還付金額の内訳はどこにも書かれていません。
ですので自身で数字を解析するしかありません。
ちなみにBさんは付加保険料(月400円の追加)も納めているので複雑です。
合計 | 基本額 | 付加保険料 | |
実際に納めた額(1年前納) | 197,310円 | ||
普通に1年分納めると | 200,880円 (16,740円×12) |
16,340円×12 | 400円×12 |
還付額 | 132,400円 | ||
実際に納めた額との差額 | 64,910円 |
差額の64,910円が2018年4月から7月の4カ月分に使われたこととなります。
1カ月あたりは16,228円
普通に納めるよりも、1カ月あたり16,740円 ー 16,228円 = 512円 安くなりました。
Bさんからは「なぜこの金額?」と言われたのですが、割引の計算が
割引額は年利4%の複利現価法によって計算した額です
(出典:日本年金機構ウェブサイト)
となっているので、「ややこしい計算をしています」としか説明できませんでした。
最終的に、前納により有利な取り扱いを受けた点を強調し、Bさんには納得していただきました。
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手続きはどうする?
手続き用紙はどこで手に入れる?
この還付金請求はご自身で請求手続きをしないといけません。
しかし、Bさんは手続き用紙を請求した覚えはないとのこと。
ご安心を。
手続き用紙は黙っていても勝手に送られてきます。
用紙に必要事項を記入して送り返すことで、それがすなわち還付請求手続きとなるわけです。
いつまでにする?
還付金の請求期限は2年です。
手続き用紙には
お手元に届いた日の翌日から起算して2年を経過しても還付請求書の提出がない場合は、時効により払い戻し(還付)を受けることができなくなります
とあります。
イレギュラーなケース
還付請求書からわかるちょっと変わったケースについてまとめてみます。
本人が請求前に亡くなったらどうする?
還付請求するはずの本人が亡くなってしまうと一体どうなってしまうのか。
この場合は、民法における相続人が請求することになります。
年金制度では遺族年金等で請求できる遺族の範囲が独自に決まっています。
ところが、この還付金請求は年金独自のルールが登場しません。
請求書には亡くなった人との続柄に丸をつけて、証明書類を添付することになります。
代わりの人が受け取ることもできる
還付金の受け取りを代理人に委任することもできます。
この場合は、還付金の振込先を代理人名義の口座に指定します。
ちなみに、年金の振込は本人名義の口座でないとダメです。
今回の事例まとめ
今回は国民年金保険料の還付金の事例をまとめてみました。
ポイントは以下のとおり。
- 前納してから年金の立場が変わると還付の典型事例
- 手続き用紙はだまっていてもやってくる。2年以内に要手続き
- 本人死亡なら相続人が代わりに手続き、代理人受け取りも可能
A社長が社会保険に加入した事例から配偶者のBさんの環境変化の後日談はまだあります。
Bさんは個人型の確定拠出年金に入っていますから、そのあたりの手続が必要。
また先日はAさんに「医療費を返せ」という通知までやってきました。
一体、何が起きたのでしょう。
詳しくは別記事で順番に解説していきます。
出典・参考にした情報源
日本年金機構ウェブサイト
事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。
シモムー
みんなのねんきん主任講師