どんなニュース?簡単に言うと
在職老齢年金の計算で使われる基準額。2019年度は28万円はそのままで48万円は47万円に変更です。今回はこれらの数値のうち、47万円はどこから来た数字なのか、なぜ今年度は2018年度と比較して1万円増えたのかその仕組みを解説します。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
2019年度は46万円が47万円に!
老齢厚生年金をもらいながら社会保険に入ると自身の年金額と給料の合計額に応じてその年金額がカットされる仕組み。
それが在職老齢年金(通称「在老 ざいろう」)。
というわけで、前回は64歳までのカットの仕組みに使われる28万円についてまとめました。
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決定版!2019年度の年金額はこれだ!在職老齢年金の28万円はなぜ28万円か|みんなのねんきん
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今回はもう1つのカットの基準額である48万円について見てみましょう。
この48万円は65歳以上の人が受け取る老齢厚生年金で登場します。
メモ
64歳までのカットの仕組みでも48万円の数字が登場する場面がありますが、メジャーなケースでは無いので触れません。
前回にも説明しましたが、この金額は年金額がカットされるか否かのボーダーライン。
自身の年金額と給料の合計額が28万円を超えたり、48万円を超えると年金が減るんです。
そして、
28万円も48万円も未来永劫固定された数字ではありません。
したがって、
その変動する仕組みの結果、
2019年度の48万円は47万円と数字が変わりました。
2018年度は46万円だったのですが増えています。
増えれば、年金受給者にとっては有利になりますね。
年金額カットのハードル(基準ライン)が上がるわけですから、昨年度若干カットされていた人は今年度はカットされないという状況もあるでしょう。
ここで、
46万円、47万円、48万円といろいろな数字が出ていますが、もともとは48万円がその基準額。
そこで、
今回はこの48万円に焦点を当てて、なぜ2019年度が47万円に変化したのかを解説してみます。
在老の「48万円」ってなぜ「48万円」?
在老の48万円はなぜ48万円なのか?
28万円と同じで、法律にはこう書いてあります。
支給停止調整額は、四十八万円とする。
年金をカットする基準としての28万円は専門用語で「支給停止調整開始額」とよびました。
こちらの48万円は「支給停止調整額」とよびます。
紛らわしいのですが、48万円の方は「開始」という字句がありません。
(ッと言っても注意するのは社労士受験生くらいでしょうが・・予備校講師時代が懐かしい・・)
では48万円はどこからやってきた?
厚労省の資料によれば、この数字の根拠はこうです。
現役男子被保険者の平均月収を基準として設定している。
(厚労省 平成23年10月11日 社会保障審議会年金部会 資料2 6ページ)
「28万円」は夫婦2人の標準的な年金額を指標にしていました。
ところが、「48万円」は年金受給者ではなく、現役の年金加入者、しかも男子の平均月収を基準にしています。
なぜ、64歳までの在老と65歳以降の在老でこのような違いがあるのか。
考えてみると、もともと65歳以上の人のための在職による年金カットって制度としてありませんでした。
しかしながら、
少子高齢化で現役世代の負担が増している。
にもかかわらず在職しつつ、満額もらえるのは現役世代の理解が得られない。
というわけで、
平成12年の改正で65歳以降も在職するなら69歳までは厚生年金の保険料を納めてもらう。
同時に在職による年金カットの仕組みを取り入れたといういきさつがあります。
ここで、
年金制度上65歳以上は高齢者という位置づけで、基本的には年金で生計を立てる人たち。
ですので、64歳までの人たちとはカットの基準を別にして、特に緩くしているわけです。
具体的には、
高齢者の就労意欲を阻害しないように配慮しつつ、年金と賃金の合計が賃金の上昇に応じて増えるという仕組みのようです。
だから、現役世代の男子の平均月収を基準にして、世間の賃金の変動に応じて48万円が変化するわけです。
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「48万円」は賃金に連動して変わる
というわけで、「48万円」が変動するルールは賃金の動きに左右されることがわかりました。
メモ
「賃金」と言っても、実際は「名目賃金変動率」というもので変化させます。この「名目賃金変動率」は「物価変動率」に「実質賃金変動率」を掛けて算出します。もう私にはわけがわかりません。
法律にはこうあります(一部わかりやすく表現を変えています)。
平成十七年度以後の各年度の名目賃金変動率(物価変動率×実質賃金変動率)を乗じて得た率をそれぞれ乗じて得た額が四十八万円を超え、又は下るに至つた場合においては、当該年度の四月以後の支給停止調整額を当該乗じて得た額に改定する。
結論として、「48万円」の変更ルールをざっくり言うと、
48万円に平成17年度以降の名目賃金変動率を反映させる
ということです。
「28万円」のところでも説明しましたが、平成17年度以後の率を掛ける理由は、平成16年に年金の大改正が行われたから。
平成16年は「48万円」で決め打ちして、平成17年度以降は名目賃金変動率をそれぞれ掛けていくこととなります。
「それぞれ」ですので、
48万円 × 1.003(平成17年度) × 0.996(平成18年度) × ・・・
という具合です。
で、結論としてこうなります。
名目賃金変動率 | 右は端数処理後 | ||
480,000円 × | 平成17年度 | 1.003 | 481,440円 → 480,000円 |
× 平成18年度 | 0.996 | 479,514円 → 480,000円 | |
× 平成19年度 | 1.002 | 480,473円 → 480,000円 | |
× 平成20年度 | 0.998 | 479,512円 → 480,000円 | |
× 平成21年度 | 1.011 | 484,786円 → 480,000円 | |
× 平成22年度 | 0.976 | 473,152円 → 470,000円 | |
× 平成23年度 | 0.980 | 463,689円 → 460,000円 | |
× 平成24年度 | 0.986 | 457,197円 → 460,000円 | |
× 平成25年度 | 0.996 | 455,368円 → 460,000円 | |
× 平成26年度 | 1.005 | 457,645円 → 460,000円 | |
× 平成27年度 | 1.025 | 469,086円 → 470,000円 | |
× 平成28年度 | 1.000 | 469,086円 → 470,000円 | |
× 平成29年度 | 0.991 | 464,864円 → 460,000円 | |
× 平成30年度 | 0.998 | 463,935円 → 460,000円 | |
× 平成31年度 | 1.008 | 467,637円 → 470,000円 |
ここも1万円単位の端数処理が登場
「28万円」の時にも出てきましたが、最終的には1万円単位になるように端数処理します。
その額に五千円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五千円以上一万円未満の端数が生じたときは、これを一万円に切り上げるものとする。
というわけで、
表にあるとおり、2019年度は2018年度と比較して約4,000円の変動。
端数処理の結果、47万円となったわけです。
今回のニュースまとめ
今回は2019年度の年金額について、在職老齢年金の停止基準額がどのように変化するのかを見ました。
ポイントは次のとおり。
- 48万円は65歳からの老齢厚生年金において登場する基準額
- 48万円は現役世代の男子の平均月収を基準にした数字
- 65歳以降の高齢者は年金を中心として生計を立てるため、年金カットの基準は64歳までの基準より緩くなっている
- 1万円単位に丸める端数処理は28万円と同じ
と、毎年度疑問に思っては、次の日には忘れるという生活を送ってきました。
がしかし!ようやく理解できました!
と思ったのもつかの間・・・。
このコラム公開日(2019年6月5日)によりによって、
政府の骨太方針 在職老齢年金の廃止を含めた見直しを検討
とのこと。
人生とは思い通りにいかないものです・・。
出典・参考にした情報源
厚生労働省年金局年金課の担当の方
シモムー
みんなのねんきん主任講師