どんなニュース?簡単に言うと
2020年1月24日。厚労省は来年度2020年(令和2年)度の年金額や保険料額を発表しました。年金額は2019年度と比較して0.2%増額です。来年度はなぜ増額するのか?年金額と保険料改定の仕組みを発表されたプレスリリースのデータを利用して解説してみます。今回は厚生年金のもらえる年金額について取り上げます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
2020年度の年金額を正式発表する政令が2020年3月末に出ます!
2020年度の年金は前年度比0.2%増と厚労省より速報的に発表されました。
来年度の金額を定める政令が公布・施行されることで確定ということになります。
間もなく、政令が出るこの時期(執筆時は3月22日です)。
最後は厚生年金の年金額に触れて完結とします。
以前、当ブログでも「もらえる基礎年金編」「納める国民年金・厚生年金編」について記事にまとめました。
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決定版!2020年度の年金額はこれだ!もらえる基礎年金編|みんなのねんきん
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決定版!2020年度の保険料額はこれだ!納める国民年金・厚生年金編|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2020年1月24日。厚労省は来年度2020年(令和2年)度の年金額や保険料額を発表しました。国民年金の保険料額は2019年度と比較して130円増額です。来年度はなぜ増額 ...
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今回は「もらえる厚生年金編」と題し、基礎年金と同じく0.2%増となる仕組みと在職老齢年金の改定の仕組みについてまとめてみます。
0.2%増額は厚生年金も同じ
「もらえる基礎年金編」の記事でまとめたとおり、毎年度の年金額は2段階で決まります。
おさらいしておきましょう。
最初のステップは年金が上がるのか下がるのかを決めます。
67歳までの年金受給者は賃金の動きを反映。68歳以降の人は物価の動きを反映するのが原則。
ところが、
この原則が使えない場合は、全員が同じ指標を使います。
2020年度は全員が賃金の指標を使って増額することとなりました。
次のステップはマクロ経済スライドという年金増額抑制の仕組みの発動。
年金額が増額する時に限って登場します。
- 第1ステップ(賃金と物価の動きによる改定):全員賃金の指標で0.3%増
- 第2ステップ(マクロ経済スライドによる改定):全員0.1%分減額
結果、0.2%の増額。
これはもらえる厚生年金でも同じです。
ただ、厚生年金の場合は基礎年金のように満額が約78万円とバシッと決まっているわけではありません。
人によって納めてきた保険料が異なりますから簡単な話ではないんです。
2020年度の0.2%増えた厚生年金の報酬比例額
もらえる厚生年金の年金額は、現役時代に納めた「報酬」に連動することになります。
この連動した金額が「報酬比例額」で、もらえる厚生年金の本体部分の金額になります。
計算式の考え方はこんな感じ。
報酬比例額 = 現役時代の報酬 × 納めた月数
この計算式の0.5%くらいが実際に受け取れる年金額になります。
ところで、
「現役時代の報酬」といっても、時期によって異なりますから、「報酬」は厚生年金に加入した全体の期間の平均から計算する必要があります。
また、平均を取るといっても、時代によって貨幣の価値は異なるので、平均を出す前に価値を揃える必要があります。
この価値を揃える作業を「再評価」といいます。
当時の月額の報酬に再評価率を掛けて再評価することとなります。
で、この再評価率が毎年3月末の政令で書き換えられます。
書き換えられた際に今年度の年金額の増減を織り込んで数字を変えるということになるんです。
メモ
具体的な再評価率の違いは2019年度のコラムをご覧になっていただくとわかります。執筆時点では最新の政令が出ていないのでこの程度にとどめておきます。
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決定版!2019年度の年金額はこれだ!もらえる厚生年金編|みんなのねんきん
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2020年度の0.2%増えた厚生年金の加算額
もらえる厚生年金は本体部分である報酬比例額と加算額で構成されています。
老後にもらえる厚生年金の場合、加算額は2種類あります。
- 計算上不利益にならないよう補填する加算:経過的加算
- 家族がいるから加算:加給年金
これらの加算額も増額がされています。
経過的加算
経過的加算は65歳からの老齢厚生年金に計算上不利益にならないように補填する意味合いの加算です。
詳しい計算式は省略しますが、老齢厚生年金を受け取る人全てに加算があります。
そこで使われる数字が平成16年度の改正時に決めた「1,628円」と「780,900円」。
それぞれ以下の計算式で毎年度変わります。
- 1,628円 × 改定率
- 780,900円 × 改定率
「改定率」は「もらえる基礎年金編」のところで解説したとおり、平成16年度に決定した金額を毎年度変えるための率です。
2020年度は1.001を掛けることになりますので、
- 1,628円 × 1.001 ≒ 1,630円 前年度から+4円
- 780,900円 × 1.001 ≒ 781,700円 前年度から+1,600円
となりました。
家族の加算も同じ改定率で計算
厚生年金には年金額に配偶者手当の加算があります。
この加算額も考え方は同じ。
平成16年度の金額に上と同じ改定率を掛けます。
2020年度は、
224,700円 × 1.001 = 224,924.7 ≒ 224,900円 前年度から+400円
となりました。
在職老齢年金の計算で使う基準額は2019年度と同じ
老齢厚生年金をもらいながら、社会保険に入る働き方をすると年金が止まる仕組み。
それが在職老齢年金。
年金が止まる基準額は毎年度変わるのですが、2020年度は昨年度と同じとなりました。
つまり、60歳台前半の人は28万円、65歳以降の人は47万円です。
なぜ、28万円なのか?47万円なのか?は以前のコラムを参考にしてください。
結構、詳し目に説明しています。
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決定版!2019年度の年金額はこれだ!在職老齢年金の28万円はなぜ28万円か|みんなのねんきん
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両者ともに同額になった理由は計算した結果、端数処理をしたら同じだったということです(1万円単位になるよう四捨五入の端数処理をしますから)。
- 281,089.88・・円(2019年度)× 1.002 = 281,652.06・・円 ≒ 280,000円
- 467,637.27・・円(2019年度)× 1.004 = 469,505.48・・円 ≒ 470,000円
(「1.002」や「1.004」は賃金に関する指標ですが、上のコラムで解説しています)
今回のニュースまとめ
今回は2019年度の年金額について、厚生年金に関する金額がどのように変化するのかを見ました。
ポイントは次のとおり。
- 2020年度の厚生年金は基礎年金と同様、賃金の指標とマクロ経済スライドにより0.2%の増額となった
- 経過的加算の2020年度の数値は1,630円(+4円)と781,700円(+1,600円)
- 配偶者がいるときの2020年度の加算額は224,900円(+400円)
- 在職老齢年金で停止となる基準額は2019年度と同じで28万円と47万円
2020年度の年金額を解説するシリーズも今回で最終回となりました。
これでようやく新年度を迎えることができます。
新しい政令の内容は以下の情報源では更新が遅いです。
お急ぎであれば3月終わりに官報を見るのが良いです。
今は「インターネット版官報」もありますよ。
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インターネット版官報
独立行政法人 国立印刷局が提供するインターネット版官報です。直近90日分の官報情報(本紙、号外、政府調達等)は全てPDFで無料で閲覧できます。また、過去の法律・政令等、政府調達も閲覧できます。
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気が早いですが、2021年度はどうなるでしょうか。
年明け早々コロナウイルスで経済が下降中。しばらく続きそうですから年金額アップは厳しいかもしれません。
詳しくは、また来年のこの時期(1月から3月)にお会いしましょう!
出典・参考にした情報源
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厚労省プレスリリース:
- 政令の内容:(2020年3月22日現在、昨年度のまま。今後更新されます)
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シモムー
みんなのねんきん主任講師