どんなニュース?簡単に言うと
2020年1月24日。厚労省は来年度2020年(令和2年)度の年金額や保険料額を発表しました。年金額は2019年度と比較して0.2%増額です。来年度はなぜ増額するのか?年金額と保険料改定の仕組みを発表されたプレスリリースのデータを利用して解説してみます。今回は国民年金(基礎年金)のもらえる年金額について取り上げます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
年明けの物価変動の発表を待たないと年金の発表もできない
毎年1月になると、厚労省は次年度のもらえる年金額・納める保険料額を公表します。
なぜこの時期でしょうか?
年金額や保険料は物価や賃金の動きをもとにその基準となる金額を変えます。
このうち、最新の物価の動きが公表されるのが1月であり、それまで待たないと公表できません。
だから例年1月がそのタイミング。
もらえる年金額に関しては、結論として0.2%の増額とのこと。
どうしてこの金額になったの?
プレスリリースには理由が載っているのですが、一般の人には全く意味がわかりません。
そこで、なぜ0.2%の増額なのか?
今年も初学者に向けて噛み砕いて解説してみます。
メモ
このコラムは1年前に執筆した「決定版!2019年度の年金額はこれだ!もらえる基礎年金編」をベースにして執筆しています。似たようなことが書いてありますがお許しください。手を抜いているわけでは・・あります。
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決定版!2019年度の年金額はこれだ!もらえる基礎年金編|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2019年1月18日。厚労省は来年度2019年(平成31年)度の年金額や保険料額を発表しました。年金額は2018年度と比較して0.1%増額です。来年度はなぜ増額するのか? ...
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第1ステップ 物価と賃金でもらえる年金が決まる
毎年度の年金額は経済の動きに応じて変化します。
ほんのわずかな数値の変化でも年金額が変わるんです(ですので毎年検証するのが大変。5年に1回くらいでいいと思うんですが)。
考え方は少し複雑ですが、噛み砕いていきましょう。
次年度のもらえる年金額は次の2つのステップで考えます。
- 賃金や物価の動きを反映して増減させる
- 1で増額する場合に限ってその増額の幅を押さえる
最初のステップとして、賃金と物価の動きを検証してみます。
もらえる年金額を決める原則のルール
物価と賃金の指標をどう年金額に反映させるのか。
原則のルールはこう。
年金は社会の豊かさを反映して決める仕組み。
年金額を一番最初に決めるときはその豊かさを反映させるため現役世代の賃金の動きをもとにします。
そして、もらい始めた次年度以降は実質的な価値を維持するため物価の動きをもとにします。
ところが、実際は賃金の統計のとり方の関係で、68歳から物価の指標を使います。
少し混乱するのでそのルールをまとめると、
- もらい始めから67歳までは賃金の指標で年金改定
- 68歳からは物価の指標で年金改定
- 人によって年金改定の指標が異なる
ということなんです。
このルールをもとに来年度の年金額は以下のようになるはず。
プレスリリースによれば、
- 物価は +0.5%
- 賃金は +0.3%
つまり、67歳までの人は賃金の指標を使い+0.3%、68歳以降の人は+0.5%となるはず。
しかし、よく考えてみてください。
現役世代の賃金が0.3%しか伸びていないのに、多くの68歳以降の方の年金を0.5%増としてしまえば、年金財政は確実に悪化します。
現役世代が納める保険料は賃金に連動します。
とすれば、保険料の集まりが悪いのに、もらえる年金をそれ以上に増やすことはできないはずです。
物価の伸びより賃金の伸びが小さい
こんな場合には原則のルールは使えません。
そこで、例外のルールがあるんです。
2020年度は例外ルールで全員が賃金を使う
厚労省発表のプレスリリースにわかりやすい資料がついていたので引用しましょう。
この表は起こりうる物価と賃金の動きをすべてまとめたもの。
(2019年度も2020年度も同じ状況なので上の図は平成31年度のものを流用しています。)
①から③までは原則のルールを使うケース。
矢印の長さや方向が違ってますね。つまり、67歳までの人と68歳以降の人は別々の改定という原則。
④から⑥までが例外のルールを使うケース。
矢印の長さや方向は同じですね。つまり、全員一律の改定。
例外のルールはすべて賃金の伸びが物価よりも小さいというケースであることがわかります。
2020年度はこのうちの⑥に該当し、全員が一律で伸びの小さい賃金の指標を使うこととなりました。
第1ステップ(賃金と物価の動きによる改定):全員0.3%増
第2ステップ 増額見通しならマクロ経済スライド
2020年度は▲0.1%の引き下げが必要
次のステップです。
最初のステップで増額の改定がされる見通しになると、次のステップでは「マクロ経済スライド」が登場します。
このスライド、一言でいえば、年金が増えそうでも増やさない!という増額抑制策。
詳しくは、図解で解説したことがある以下の記事を参考にしてください。
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2016通常国会 年金改正案提出!年金はこう変わる 年金受取世代編|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2016年1月から開会している通常国会に年金制度改正の法律案が提出されました。その具体的な中身を噛み砕いて説明してみます。思った以上に大きな影響がありそうな改正案。今回は ...
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実はこのスライド、数値が毎年度変化します。
2019年度は▲0.2%で、2020年度は▲0.1%となりました。
今回は0.1%は減らさないと財政悪化を食い止められない!という数値です。
この数値は、
- 年金加入者(現役世代)の増減
- 平均余命の伸び
という2つの要素で決めます。
現役世代の増減は保険料収入の増減につながります。
平均寿命が伸びることは年金財政を悪化させます。
というわけで、2つの状況をにらみつつ、2020年度は▲0.1%となりました。
最近はパートタイマーが社会保険に入るようになり、年金加入者が増えていることで0.1%減で済んでいるという状況です。
キャリーオーバー分は無し
2018年度から始まったキャリーオーバー形式。
マクロ経済スライドで減額しきれなかった分を翌年度に持ち越す仕組みです。
2019年度からの持ち越し分はありません。
で、今回2020年度も持ち越しはありません。
キャリーオーバーしないで済んだことは良いことです。
第2ステップ(マクロ経済スライドによる改定):全員0.1%分減額
結論、0.3%から0.1%を引いて、2020年度は0.2%の増額となったわけです。
2020年度の国民年金の満額はこれだ!
最後に、0.2%増を受けて、国民年金(基礎年金)の満額がどう変化するかを見ていきましょう。
国民年金の満額は常に平成16年度の満額を変化させる
今の年金制度は小泉内閣時代に成立した平成16年(2004年)改正の仕組みで動いています。
平成16年当時の国民年金の満額は年額780,900円でした。
この金額を基準にして毎年度、物価・賃金・マクロ経済スライドで決定した率をもとに「改定率」を掛けて満額を変えていきます。
国民年金の満額:平成16年度780,900円 × 改定率 (100円未満は50円単位で四捨五入)
この改定率は毎年3月末に政令が発表されて、すべての数値が新年度に向けて変わることになります。
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e-Gov 法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。
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2020年度は781,700円となる
毎年度の改定率は前年度の改定率に今年度の増減率を掛けて算出します。
つまり、年金額は過去の歴史から連続して今の金額に至る大きな川の流れのようなスケールなのです!
それはさておき、
2018年度の金額はこうでした。
780,900円(ここは固定) × 0.998 = 779,338.2 ≒ 779,300円(2018年度)
そして、
2019年度は2018年度改定率「0.998」に2019年度のプラス改定0.1%=「1.001」を掛けて、≒0.999
780,900円(ここは固定) × 0.999 = 780,119.1 ≒ 780,100円(2019年度)
最後に、
2020年度は2019年度改定率「0.999」に2020年度のプラス改定0.2%=「1.002」を掛けて、≒1.001
780,900円(ここは固定) × 1.001 = 781,680.9 ≒ 781,700円(2020年度)
前年度から1600円プラスという結果になりました。
家族の加算も同じ改定率で計算
障害年金や遺族年金にはお子さんがいると年金額に家族手当が加算してもらえます。
この加算額も考え方は同じ。
平成16年度の金額に上と同じ改定率を掛けます。
2018年度はこうでした。
224,700円 × 0.998 = 224,250.6 ≒ 224,300円
2019年度はこうです。
2018年度改定率「0.998」に2019年度のプラス改定0.1%=「1.001」を掛けて、≒0.999
224,700円 × 0.999 = 224,475.3 ≒ 224,500円
2020年度は、
2019年度改定率「0.999」に2020年度のプラス改定0.2%=「1.002」を掛けて、≒1.001
224,700円 × 1.001 = 224,924.7 ≒ 224,900円
前年度に比べて400円の増額となりました。
今回のニュースまとめ
今回は2020年度の年金額について、国民年金(基礎年金)の年金額がどのように変化するのかを見ました。
ポイントは次のとおり。
- 2020年度は全員が賃金の指標プラス0.3%を使う
- マクロ経済スライドが発動するため▲0.1%を反映してプラス0.2%の年金増
- 2020年度は平成16年度の基礎年金額に改定率を掛けて781,700円、加算額は224,900円となる
2020年度も年金額が増え、結果として2年度連続で年金額が増えました。
マクロ経済スライドによる年金額抑制も機能させたうえで、増額の結果は良かったと思います。
社会保障改革がいつも叫ばれていますが、公的年金については、平成16年度に改正した対少子高齢化の仕組みがようやく機能してきたと感じます。
相変わらず年金不信と言われますが、私は明るい見通しを持ちたいと期待しています(破綻するなんてあまり聞かなくなりましたし)。
むしろ、医療や介護の制度の方が危ういんじゃないでしょうか。
私はそっちの方が心配です(が、門外漢なのでみんなのねんきんでは扱いませんが・・)。
さて、次回は国民年金の保険料について解説します。
若干、金額が高くなりましたし、前納の金額も発表されましたから。お楽しみに。
出典・参考にした情報源
厚労省プレスリリース:
シモムー
みんなのねんきん主任講師